思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ゴジラ マイナスワン』

ゴジラ マイナスワン』
☆☆☆☆★

いわゆる特撮パートは基本的に大満足。日本でもこれだけのCG怪獣が表現できることに感無量である。いや『シン・ウルトラマン』はなんだったんだ?! という感じだけど。ことにあの体表なので、ピクセル数が圧倒的なゴジラであればなおのこと。さらに水回りもあるという、困難の三乗なのに。
戦後すぐ、という設定は面白いのだが、NHK連続テレビ小説を連想せざるを得ない(私が見てた30年前くらいは戦後から始まるのが定番だった)のが、ちょっと地味で、少なくとも子供は退屈しそう。序盤すぐをはじめ、飽ききったころに燃えるシーンは入っているのだが。
特撮周りでは概ね100点から150点なのだが、ゴジラの歩き方などは私的にはアクションフィギュアをコマドリしているみたいでイマイチ。薩摩剣八郎(川北)ゴジラが染み付いているというのもあるけど。
これまでのあらゆるゴジラ映画のオマージュと、山崎監督作品からの集大成的な映画でもあり、少なくとも『シン・ゴジラ』の次のゴジラ映画としては正解といって良いだろう。オタク向けではないところもミレニアムシリーズの轍を踏まないように計算されていて、商業的には正しい。
ミリオタ的にもニヤリとさせられる要素が満載。
シン・ゴジラ』とは正反対に、有名俳優をメインの5、6人に限定して、CGに予算を全ふりしている潔さも称賛を送りたい。確実にその効果はあったわけだし。また、作中の、政府や軍人ではなく、民間人こそが主役、というテーマにも合致しているし。
タイトルは好きじゃない。『G3』はかっこいいけど、『G−1』はなんか間抜け。

以下ネタバレ

ファーストシーンが零戦(ちゃんと「ぜろせん」ではなく「れいせん」と言っているのもポイント高し)であるのは、『永遠の零』オマージュではあるが、ラストバトルの震電への伏線でもある。
最初に出てくるゴジラは、見間違いかと思ったが、小さい。口からはよだれがねばってるし、恐竜の仲間の設定。これは『ゴジラVSキングギドラ』のゴジラザウルスのオマージュか。それを引きずっているところも、同作の新藤会長を連想せざるを得ない。助けてもらったか、仲間を殺されたかの差はあるが。
戦後の廃墟のシーンはかなり頑張っていた。浜辺美波と出会うところって『進撃の巨人』と同じセット?? となりのおばさん役の安藤サクラとか、めちゃくちゃ連続テレビ小説っぽい(このへんの3人とも朝ドラ主演者だし)し、さすがに退屈かな。ゴジラ映画としては、もうちょっとテンポよくカットしても良かったと思う。『三丁目の夕日』とか『永遠の零』とかのお涙路線からすると、一般人向けの必要な演出なのかもしれず、難しいところではある。
重巡洋艦高尾は、もっとも好きな艦戦の1つ。それがゴジラとがっぷり四つにやりあうんだから、ここだけで萌え&燃え泣き (T_T) 劇伴はゴジラのテーマだが、『モスラ対ゴジラ』というのはちょっとひっかかったかな。
機雷が口の中で爆発してダメージを受けたゴジラが、すぐに再生するのはまさかのハリウッド版『キング・オブ・モンスターズ』からのオマージュ。しかもゴジラではなくギドラのほう、というマニアックなひねりかた。同作が平成ゴジラからひねったオマージュをしているので、さらにメビウスの輪的な感覚に。
銀座に上陸してからは、「あれ?」と勘違いするくらい、『初代ゴジラ』のカラーリメイク? というくらいのオマージュシーンが連発。列車が加えられるとか。でも、あの中に浜辺美波がいて、宙吊りになる、しかもそれでいてほぼ無傷、というのはやりすぎ。後にわかるが、浜辺美波は、最後まで不死身っぷりを見せる。
銀座で町を破壊するところで、ようやく『ゴジラのテーマ』が。でも、ここは『ゴジラの猛威』以外ないのに、それはとうとう最後まで流れなかったのが残念ポイント。ここでゴジラに砲撃を加えたのが、シャーマンかと思いきや、そうじゃない! 一瞬しか映らなかったが、3式か4式か、まさか幻の5式戦車? 後の震電が出ることを踏まえると、5式かも。
放射熱線を吐くのは、そういえばここまで吐いたところ映ってなかったんだと改めて思わせるほどためてきた。高尾の時は海中にいて見えなかったからね。背ビレがボコボコ飛び出るのも、『シン・ゴジラ』を踏まえているとも、庵野監督イズム(エヴァのビーストモードとか)とも言えるし、なんかアクションフィギュアっぽいともいえる。
アクションフィギュアといえば、メイキングでゴジラの歩き方にはこだわっていたとあったので期待したが、なんかアクションフィギュアをコマ撮りしているみたいで、全然ダメだった。身体の各ユニットが別々に動いているみたい。百歩譲っても、鳥のように頭が前後するのはどうなんだかなぁ・・・。恐竜イコール鳥類説みたいではあるが。
放射熱線は圧巻。これまた『シン・ゴジラ』の上をいこう、というので、きのこ雲から黒い雨まで含めてめちゃくちゃ燃える、これまた落涙シーンだったが、次の作品がこのままインフレ路線になるのを大いに危惧する。
戦力のない状態でどうやってゴジラを退治するのか、というところもハードSF的に納得の解決。過去のゴジラシリーズで氷づけ作戦が何回か行われていることを知っていれば、なおのこと納得。序盤からの、深海魚の浮上死という伏線もうまく活かしている。
最終決戦では、雪風(!)から嫌いのようにフロンガスボンベを連続で投下するところは庵野監督イズムで、『エヴァ』のヤシマ作戦を連想させて燃え泣き(^_^;) それを巻きつけて、艦が発進するところで『ゴジラのテーマ』! ここで大号泣ですよ! 『キング・オブ・モンスターズ』でもそうだったが、『ゴジラのテーマ』がゴジラに対する人類のテーマであることとのダブルミーニングでかかることこそ、分かっている感が満載!
浮上したゴジラが皮膚がひび割れて白いものが出ていたのはちょっと『ゴジラXメカゴジラ』を踏まえているかも。でも、ここで無理して引っ張り上げる必要なくない? 急激に浮上させるには、数分間間を開けてしまっているし。
敷島の特攻シーンの直前に、しばらく無音になるのは、ながすぎて音声トラブルかと思った。射出座席は、なんか英語だかドイツ語だかが映っていて字幕も出なかったので、なにかあるなと思っていたところ。
しかし、本作の子役の女の子は、3歳くらいにしか見えないのに、ほんとちゃんと演技できていてこれまた良い意味でお涙頂戴もの。
顔がふっとんだゴジラはちょっと間抜け。最後にみんながみんな敬礼するのも気持ち悪い。敷島が特攻で死んだのならわかるが、ゴジラに敬礼する意味がないのだ。『GMK』みたいに兵士の亡霊なら別だが、そうでもないし。『ガメラ2』をやりたかっただけなんじゃない? しかもそれですべっている、と。
ラストカットでゴジラが再生するのは『GMK』だね。エンドロールで足音で終わるのも意外となかった。オープニングで足尾を使わなかったのは、ここで使いたかったからか。