思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

スペース•カウボーイ

☆☆☆

老人が宇宙へ行く、というのはクリント•イーストウッド版の『ライト•スタッフ』または『アルマゲドン』という感じだが、一番近いのはロシア映画の『サリュート9』じゃないだろうか。
宇宙開発黎明期にパイロットとして訓練していたイーストウッドは、わがままで無茶な性格のため、宇宙に行くことは叶わなかった。
数十年後、何故か彼が設計した機械を積んだロシアの衛星が、軌道を外れ、大気圏突入することが判明。普通なら燃え尽きるが、大きいこと、そして後に判明するが、核ミサイルを積んでいるため、宇宙に行って修理するしか手段がない。猶予時間も4日ほど。
イーストウッドは、現役の宇宙飛行士に機械を直し方を教えるのはムリだと、自分が宇宙へ行く夢をこの際に叶えようと、当時のチーム、つまりはジーサンズ宇宙飛行士でミッションをさせようとねじ込む。
前半には、その一人が現役の複葉機パイロットで、曲芸飛行で客が吐く場面がある。ゲロを吐くシーンがある映画にハズレなし、というジンクスを私的に定義していたので、期待したのだが、結論からすると、イマイチだったなぁ……。
宇宙へ行くまでは良かったのだが、ロシアの衛星が、デザインのハチャメチャさといい、撮り方といい、どっからどう見てもミニチュア。『さよならジュピター』か!? ってくらい。シャトルのほうは良くできてるのに。
じいさん、しかもイーストウッドの相棒(腐れ縁?)であるトミーリージョーンズとおばさんのラブロマンスとか、いらないし(´Д`) このミスター•スポックみたいな髪型のおばさん、どこかで観たなぁ……と思って調べたら、なんと『ミスト』のキリスト教原理主義者のおばさん!
あと、顔も背も長い、イーストウッドとソリが合わないボス役も、これまた見たことあると思ったら、『ソルジャーズ•アイランド』の富豪のひとり。
本作を一言で言えば、実話ベースなら許せるが、フィクションであるなら、中途半端すぎる。限りなくリアルにするか、それこそ『アルマゲドン』くらい振り切るべき。
忌憚なく言って、本作は真面目なイーストウッドらしからぬ失敗作では?

以下ネタバレ

核ミサイルを処分するのにとった方法が、月に向けてミサイル自身のロケットを噴射させること。それには誰か一人が衛星に乗って操作しなければならない。自己犠牲になるのがトミーリージョーンズだが、打ち上げ前にガンであることがわかっている(普通なら宇宙には行けないところ、これまたイーストウッドのゴリ押しで乗船)ので、死んだとて、あんまり悲壮感はない。
あと、シャトルの大気圏突入、角度が急すぎない? 頭から突っ込むんじゃなくて、ジェットスキーに引っ張られるサーフボードみたいな角度になるんじゃないの? まあ、このころには本作に厳密なリアリティを求めても仕方ない、という感じにはなってるんだけど。