思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

三体X

宝樹
☆☆☆★
早川書房

日本人には紛らわしいが、中国人作家のペンネーム。乱歩に言えば、本作は『三体』三部作の二次創作。それが半ば公式化、本編と同じ出版社、本書においては同じ翻訳者で並んで出版されることになったのだ。
日本で言えば『ガンサイト』から『ガンダム•センチュリー』が出版された、みたいな感じ?
あとは雑誌『ガンダムエース』の連載群とか。
本編第三部のラストで二人きりになった登場人物を主軸に、ストーリーの裏側にあったであろうパースペクティブや、文字通り「宇宙の秘密」を明かす。特に後者は、初期のソウヤーのようなセンス・オブ・ワンダーを感じさせてくれる。
確かに地味さというか、こなれてない感じもあるが、山田正紀作品のような時空のスケール感を味わうことができる。

「日本が中国を侵略」
中国産らしい記述はちょこちょこあるが、これが代表例。いくらSFったって、中国が日本に軍事侵略するのはあり得るが、逆はないわ……。

「三体人は体長数ミリ」
このへん、以外にもあれだけと大長編なのに、三体人の正体に関してはほぼ描写がなかった、というのが逆に驚きだ。本書で設定されたもの。

「宇宙は最初は十次元で時間はなかったが、敵の攻撃で、次元がひとつ下がるごとに時間が伸びる」
このへんが、ソウヤー的なビジョンというか、プロット。超ヒモ理論や、膜宇宙まで入っているのは格別驚くほどものではないが、人為(?)的に次元を下げる、というアイデアが面白い。