思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ガンダムthe origin 青い瞳のキャスバル
この花王名作劇場みたいな副題はなんとかならなかったのかねえ…。
安彦アニメとしては、マンガの再現度も含めて言うことなし。ギャグっぽい崩し顔まで含めて完璧。
ただし、それがファースト『ガンダム』っぽいかというと話はややこしくなる。
もちろんアニメ技術の進歩もあるのだろうが、動きにメリハリのある、動くところは動く、止めるところは止める、ぶっちゃけて言えば『めぐりあい宇宙』の延長上とは違うのだ。もちろん、原画集を見てしまった現在では、『ユニコーン』でも感じた線画トレースの入り抜きのなさも残念ポイント。
地味な本編ゆえのサービスシーンとも言える冒頭ルウム戦役ても、フルCGでのカメラ、物ともに不自然に動きが速すぎる『イグルー』からの問題点がそのまま露呈している。これまた『めぐりあい宇宙』のドレン艦隊戦をタイミングをそのままやってくれれば必要十分なのに…。
本編はひたすら地味で、良くも悪くも七十年代のヨーロッパ映画を見ているようだった。ジオン・ダイクンのキリストっぽさも含めて、古今東西の歴史マンガを描いてきた安彦氏らしさがにじみ出ている。
予告編では違和感のあった田中キャスバル少年だったが、観ているとそれほど気にならなかった。声優陣では、冒頭のシャア以外では唯一のオリジナルきゃすと、ギレンの銀河万丈氏の存在感が圧倒的じゃないか!
なお、シリーズ第一作ということで、敢えて足したのかもしれないが、エンディングのアルテイシアのコロニーの設定についての疑問に対するキャスバルの会話は不要では?あれじゃあ、アルテイシアがバカみたいだ。コロニーに暮らす者としては生活の最低限度の基礎知識でしょ?


バトルシップ
『インディペンデンス・デイ』から続くハリウッド大味大作系のひとつ。
人類の宇宙へのメッセージに応えてエイリアンが地球を侵略(のための偵察)に来る、という話である。
大味大作という割には舞台はハワイだけに限定されているので、低予算映画の趣もなくはない。なぜかエイリアンの宇宙船の破片が香港にだけ落下するが、そこはチャイナマネーのせいか。
エイリアンの宇宙船が、まるで怪獣のように描かれているのが特撮ファンには楽しめる一点(もう一点は後述)。ミサイルポッドの出てくるギミックや、ボール型の突撃兵器はマイケル・ベイ版『トランスフォーマー』っぽい。でも、考えたら、円盤型の殺戮兵器って、富野監督が二十年前に『F91』でやってるんだよねえ…。
エイリアンのデザインはテキトーな人間型で、艦内の白兵戦も、「こんなシーンもあったほうが盛り上がるんじゃない?」的な雑さ。
いい加減な主人公が、半ば成り行きとはいえ、艦長役やるのも、あっさり浅野忠信に作戦指揮権を譲るのも違和感バリバリ。津浪ブイだけじゃ大まかな位置しか分からないので、それだけでミサイルを命中させるのは無理だし。
自艦がやられて脱出するサスペンスは『タイタニック』っぽいのがやりたかっただけでしょ。スクリューが落下するカットは良かったけど。
そんなことでエイリアンのバリア内で動ける艦がなくなった主人公たちが頼ったのが、冒頭に出てきて真珠湾に飾られていた戦艦ミズーリ。ここに来てタイトルの意味が明らかになる。これまた冒頭の場面で触れられていた当時の老兵が動かすのもいい。ただし、ホントに少しだけでも動かせる燃料と、弾薬が常備されているのか?という疑いは真っ先に浮かぶ。多分映画の嘘だろうが。
それにしても、いちばん燃える戦艦を起動させるシーンでロックをかけるのは興ざめもいいところ。どうやらハリウッドではメロディアスな劇伴を書ける人がいなくなったらしい…。
この戦艦の活躍シーンはもうひとつの特撮ファン必見のシーンで、『連合艦隊』に隔靴掻痒した人は是非とも観てほしい。
このあとのパラボラアンテナが爆発する一連のシーンは、何故爆発するのかも含めて大味大作ならではのハッタリ。エイリアンとの格闘シーンも、中盤になければまだ意味があるが、特に燃える要素はない。