思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

イミテーション・ゲーム

☆☆☆★

第二次世界大戦中、イギリスがドイツの暗号生成装置エニグマを、どう解読してのか。そういう事実は知っていたが、詳細を知りたくて観てみた。
当然ながら映画なので、数学的な詳細や論理よりも、チューリングの人間臭さが中心として構成されている。結論から言えば、本で読んだほうが早くて深く知ることができた、とは思うのだが……(^^;)
チューリングと言えば、SF/科学好きには真っ先に連想するであろうチューリング・テストを、こう組み込んで来たか、というのは嬉しい驚き。しかもそれが二重な構造として。
ドラマとしては、エニグマ解読プロジェクトチームを作ったM I6の策謀の凄まじさが印象的だった。
ま、カンバーバッチ目当ての女性客には、このへんでいいんじゃないの? 実際、カンバーバッチは、ある種の自閉症的な雰囲気はうまく演技できていたし。

以下、ネタバレ

天才クロスワード・パズラー(作者じゃなくて、解くほう)の女性とのロマンスは、映画的な脚色かと思いきや、実はチューリングが同性愛者であることを明かすための前振り、というのが面白いところ。イギリスでは60年代まで、同性愛が法律で罰せられる対象であった、というのも興味深いが、そのへんの字幕をラストシーンに入れてくるのは、ポリコレ押し付けっぽくて煩わしかったなぁ。
暗号解読の手がかりは、暗号ものミステリーを片手で数えられる数しか読んでいなくても、誰もが一度は読んだことのあるもの。暗号が初期段階だから昔はこの程度なのか、映画用にわかりやすく改変したのか、どっちなんだろう?
面白かったのが、えいがの警察が捕まえに動くのが、最後になって、戦後であるという叙述トリック的な構成。おまけに、そこで話されたチューリングテストが、刑事に対してだけでなく、実はチューリング自身が自室のチューリング・マシンを学生時代の恋人として扱っているという、ねじれた二重構造になっていること。戦後5、6年のチューリング・マシンは、AIMどころか、コンピュータとも呼べない性能なので、人間と勘違いしようもない、というのはコンピュータ史に多少詳しい人なら見破られる映画的な嘘(飛躍)なのは、目をつぶれる範囲か。