思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ジョーカー』☆☆☆

各所で話題になっていたので、期待したのだが、ちょっと違う感じ。
自転車泥棒』に代表されるイタリア映画? と言う感覚だったが、『タクシードライバー』に代表されるアメリカン・ニューシネマを現代(今頃?)にやった、と言う感じ。
面白くないのに突然発作的に笑ってしまう、と言う神経症的な持病のある、売れない道化師。
彼が社会の不条理に苦しみながらも、テレビコメディアンを夢見る。これは目指す、と言うより文字通り夢見る/妄想する話である。
ボーっと見ていると、本作に描かれていることが妄想かもしれない、と言う可能性は分からず、私も各所の感想を見聞してちょっと驚いた。再見の必要があるかもしれない。あんまり見て楽しい映画じゃないから、実現の可能性は五分五分だけど。
そもそも、ケレン味のある元ネタを、リアリティ増しで描いた、と言う意味ではファースト『ガンダム』に対する『0080』。悪役が、悪に堕ちるまでを描いた、と言う意味では(なぜか挙げている人がいなかったけど)『スターウォーズ』プリークェルと同じ。
本作が悪書的な扱いを主にアメリカで受けたのは、虐げられている人は、暴力を持って社会に対して復讐しても良い、と言うような内容であるから。
擁護派は、先に書いたように、描かれる反逆は、主人公アーサー(自称ジョーカー)の妄想であるから、作中でも実際に殺人を行なっているわけでない、と言うのだろうか。でも、仮にそうだとしても、『バットマン ダークナイト』ではガンガン殺人をしている、すなわち後にマフィア的な殺人もなんとも思わないキャラになるわけであるから、所詮は殺人者のエピソード・ゼロを描いているにすぎず、殺人者が殺人をするように”なった”所を描く映画か、殺人者が”後に”殺人をするようになる”まで”を描いた映画か、と言う些細な違いにすぎないのでは?