思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

阪神ファンと仏のこころ

ひろさちや
☆☆☆★
小学館文庫

阪神が快進撃を続けていた200 2年に書き下ろし緊急出版(?)された本。そもそも、仏教学者として有名な著者な虎キチだったというのが意外だなぁ……。別に、書く機会がなかったから知らなかっただけで、身近に知る人には有名な話なのだろうけど。
私は、大学に入って以降の20年はスポーツ全般に関心をなくしているが、元阪神ファンというか、活動休止中というか、それまでは、球場に行ったりテレビ中継は観ないものの、虎キチの学校の先生がいたり、自分でも昨日の阪神の勝敗は気にする関西人であったので、気持ちはよく分かる。
ちなみに、本書が書かれたのは、野村監督から星野監督に変わったとき。
高校野球(略)今日、勝たねば明日がない苦しい野球です。わたしは、要するに高校野球が日本の野球をだめにしたと思っています。」

「自己を否定して「頑張る」努力はいけません。自己を肯定したうえで「精進する」努力が大事です。」

「有名なクーベルタン男爵の言葉(略)not to win but to take part(略)「勝つことではなく、参加することに意義がある」と訳されています。しかし、これは厳密にいえば、誤訳ではないか(略)「役割を果たす」という、積極的な意味をもつ言葉だということです。」
一角を占める、という訳でも良さそうである。

「わたしは、アマチュアというものは、練習してはいけないものだと思います。(略)イギリス人がよくいいます(略)下手な者どうしがお互いに楽しむもの、それがスポーツだと彼らはいうのです。なんでうまくなる必要があるのか、というわけです。」

高野連にわたしが要求したいのは、1日 2時間以上練習したチームは出場停止にしなさい、ということ」

「関西で、阪神の選手が記事になる量は他のチームを圧倒しています。活躍したら必ず新聞の一面で取り上げてくれるという、その励みは相当なものです。」

「甲子園に行ってごらんなさい。テレビの解説者がいなければ、どれだけ野球が面白いかを実感するでしょう。勝ち負けに関係なく、負けてもおもしろいのが野球です。阪神の文句をいっているのは、テレビでしか野球を見ていない人ばかりであることを理解するはずです。(略)解説がいかに野球をおもしろくなくしているか。」

「誰もが毎日毎日、年をとっているのです。人生というものはすべて下り坂なのです。(略)言葉を換えれば、人生というものは、もともと負けるものなのです。(略)したがって、いかに負けを楽しむか、それが人生のおもしろみなのです。本当のおもしろみというのは勝つ喜びではありません。」