思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

バットマン・リターンズ

☆☆☆★

2、30年前に観たが特に印象に残るものがなかった。某所で本作の敵・ペンギン(半分はあなたが思った通りのもの(^^;))がいい味(悲哀)出してる、という評価があったので録画してみた。
ノーラン以降のバットマンを観た後だと、やはり低予算感すなわちチープさが気になる。
ゴッサムシティのセットがハリボテ感丸出しだとか、市長候補の演説シーンに30人くらいしか映っていないとか。
バットマンも、顔が四角いのは原作に忠実ではあるのだが、やはり違和感がある。まあこれは好き嫌いの範疇だろうが。
本作の敵(なぜどいつもこいつもヴィランなんて長い名前で呼称するのかが分からん)は指が2本ずつ癒着した奇形ゆえに川に捨てられ、地下水道に住むペンギンに育てられたらしい、書いていてアホらしくなるくらいのトンデモ設定の男。鼻が長く、小人体型で、ビジュアルもペンギンっぽい。ただし、顔は青ざめて目の周りが黒く、可愛いらしさはかけらもない(^^;)
彼が同じく地下水道をアジトにするピエロ姿の半グレ達(と本物のペンギンたち!)を率いてさまざまなテロ行為を日夜働いている。
街の有力者のひとりマックスは、とあるきっかけ(忘れたのだ(^^;))ペンギンと知り合い、彼を次の市長候補に仕立て上げる。どう考えても醜いビジュアルのペンギンに市民が熱狂する説得力は、これまた1ミリも感じ取れなかったのだが……。

もう1人の敵であるキャットウーマンは、『ワンダーウーマン1984』のチーターによく似ている。ただ、やはりこちらも設定と物語進行はハチャメチャ。秘書として仕えていたマックスの秘密を知ったが故にビルから突き落とされのはいいとして、そこに野良猫が群がってきたら、何故か生き返って、何故かネコっぽいボンテージのコスプレスーツを作ってしまう。それを着ると何故か体操選手なみの運動能力が生じ、殺されても一瞬または短時間生き返ることができる。おまけにこれまた誰に聞いたのか、ネコは七生云々から来ている設定だろう、というのは推察できるが、七回までは生き返るのだと知って(思い込んで?)いる。
バットマンのほうも、ペンギンと戦っている間に敵の仲間に市中に違法駐車したバットカーに遠隔操縦装置を取り付けられて、帰りに交通事故寸前のピンチち陥る。間抜け過ぎるぞ!
キャットウーマンを説得する際には、マスクを簡単に引きちぎったり(ビニール製かよ!?)。
そう、本作はペンギンの個人的な設定以外は、頭のおかしい登場人物たちが、リアリティのない物語を紡ぐだけの話なのだ。
では、なぜ少なくとも一部で評価されているのか、そこは理解できる。自らの意思に関係なく奇形に生まれたが故に捨てられ、その後も周囲に翻弄され、命を落とした男(ペンギン)の悲哀、いわばヨーロッパ映画的な、世の無情、不条理を描いた物語としてみれば、それなりによくできているのだ。あとはティム・バートンらしいゴシック趣味。