本書は、いわば聖書を歴史書として、その成立過程を地政学、歴史的に解説した本。キリスト教徒ではない日本人には、まさに目から鱗の内容であろう。
「人名のつく書名は、あくまでも「書名」であって「著者名」ではない。」
たとえば『エレミア書』とかであってもエレミアさんが書いたわけでも、エレミアさんのことを書いたものとも限らない、ということ。落語の題名が単なる符牒にすぎないのと同じことのようだ。
「ヘブライ語には、母音表記がない。だから、神の名を欧文表記に直すとYHWHとなるだけで、本当のところは、どう発音していいかわからない。これを「神聖四文字」といい、学者によっては「YHWH」としか書かない人もいる。というのは言語学者たちが推理した「ヤハウェ」にしても、はたして正しい発音かどうか不明だから」
強引にたとえるなら、アキバをAKBと略すようなものか。ヨホワホかもしれないしね(怒られそう)。
「正典に対して、外典(がいてん)・偽典がある。(略)偽典といっても、別に「にせもの」という意味ではない。ただ正典からはずされているというだけで、読むとおもしろいものが多い。」
「イエス誕生を告げた有名なベツレムの星。(略)天文学者たちは架空のことでなく、事実であるという結論に達した。
1603年のクリスマスの少し前、徹夜の観測で、土星と木星の異常接近がまるで一個の大きな星のようになることを発見した(略)計算の結果、紀元前7年に、この土星と木星の異常接近が三度にわたって起きていることが発見された。」
卑弥呼と日食に関連があるのと同じパターン。
「ユダヤ教(略)が、旧約につづいて、タルムード(略)を正典としている(略)タルムードはわかりにくい膨大な本であって、全部読み切ることはわれわれにはもちろん、ユダヤ人でも、専門のタルムード学者でないと不可能に近い。このタルムードの基礎となっているのなミシュナで(略)内容は律法(モーセの五書)の施行規則といったらいいだろう。」
このへんは当たり前かもしれないが、イスラムのコーラン以下の階層構造と同じだ。
「ハルマゲドンとは、メギドの山という意味。(略)メギドの戦いが、世界の終末的な戦いの意味にとられて」
このへんは日本で用いる慣用句「天王山」と似ているかも。
「人種・民族を問わず、律法を守ればユダヤ人。(略)ユダヤ人であるか否かの条件は、ただひとつ、律法を守るか守らないか」
「有名な「はじめに言葉あり、言葉は神とともにあり、言葉は神なりき」(略)この言葉は知恵のギリシア語化であり」
「イエスは(略)当時の人にとっては「ガリラヤ派のラビ」であったのだ。」
「西暦をつくった(略)紀元前1年と紀元1年の間にゼロ年を挟むことを忘れ」
忘れてたんかい!?(´д`)
「イエスが生まれたのは(略)現在では紀元前6年というのがほぼ定説である」
ちなみに、本書の刊行は昭和55年。
「イエスの誕生の夜は、11月以前であらねばならない。」
「「神秘な人=奇跡を行う人」(略)「神の子」とは以上のような意味」
「キリスト教とユダヤ教の分裂は、実にパウロにはじまる(略)ユダヤ教はイエスまでをヘブル思想史に入れるがパウロは入れない。またイスラム教徒はイエス(イヤ)をマホメットにつぐ最大の預言者とみるが、パウロはまったく評価していない。」
「キリスト教(略)基本信条であるニケーア信条(一次)ができたのは紀元325年なのである。(略)たとえば「三位一体」といった言葉は、聖書にはない。」