『ボーダーライン』
☆☆☆☆
アメリカ・メキシコの麻薬問題を扱った映画。原題は「Sicario」で、メキシコ語(スペイン語)で「殺し屋」という意味らしい。
その意味はクライマックスで分かる(本文はネタバレ有りだが、続きは本文章の最後で)。
観ている間はヒロインであるケイトを対麻薬作戦に引き入れたジョシュ・ブローリンとベニチオ・デル・トロの立場の違いがよく分からない(さらにいうなら二人の立場も)が、これもラストには一応分かるようにはなっている。
邦題は、両国の国境、という意味と、麻薬のある世界と日常の境目、はたまた戦争と平穏の境界、というような意味で、割と良いタイプもの。
ストーリーは、アメリカとメキシコの国境で展開され、特にメキシコではあっさりと人が殺し、殺され、果ては屍体がさらされる世界。
そこによく分からないまま巻き込まれた、元SWATのヒロインは、ほんと、ただの目撃者・証言者として(これもラストにはっきりする)文字どおり、彼らの所業を見ていることしかできない。
冒頭の壁の屍体群や、メキシコの吊るされ屍体など、ゴア描写もあるが、描写そのもので怖がらせるというよりも、あっさりと殺されていく人々と合わせて、人命が果てしなく軽い世界の凄惨さを表現するための1ピースに過ぎない。
『ナディア』以上に無力なヒロインで、特に寄ってきた男と寝ようかという時に起きる展開は、ある意味お約束のお色気・ベッド・サービスシーンには飽き飽きしている私には痛快で良かった。
タイトルの意味は、助演男優賞ともいうべきベニチオ・デル・トロが、(個人的)復讐を果たすために、麻薬組織のボスを殺すために行動していたことが分かる。
宇多丸師匠評で、二人が先の展開を予言(予告)してくれているから、右も左も分からないヒロインでも、視聴者が混乱しないとあったのだが、その例外がラスト。「今後はベランダに立つな」と言っていたのに、デル・トロを追うためにベランダに出たケイトは、彼に撃たれると思っていたのに・・・。撃たれないなら、先の台詞は不要だったのでは?(´д`)
2015年アメリカ