思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

君の膵臓をたべたい

☆☆☆★

本屋でポップを見た時から、タイトルの意味するところが気になっていた。ようやく実写映画を観て、その意味が分かって、胸の支えがとれた。
いわゆるケータイ小説というのは知らなかったが、タイトルでヒキのフックを作ってターゲットを離さない手法は『百日後に死ぬワニ』と同じだ。それよりも、元祖は『松本人志 一人ごっつ』の「○○まで○秒」コーナーやわな(´Д`) あとは麻耶雄嵩の『痾』か『やわらかな雨で』、京極夏彦『絡新婦の理』などの、最初にクライマックスを、見せて、ストーリー上で、それがどこに出てくるか期待させる手法。
とは言え膵臓とか、自分が患った部位を食べると治る、または食べることで相手と共に生きる、というネタは序盤で開陳される。これをミステリーとして、正当な伏線/布石/手続きとみるか、『一人ごっつ』のように、1秒前まで何の前兆もなく、なおかつ伏線と説得力ある出し方ができれば良かったのに。病気ということすら出さず、体調が悪そうな兆しだけとか、彼女の部屋に病気の本が並んでるとかだけにして。
先にミステリーと書いたが、私的には本作はミステリー風の恋愛ものというより、『明日の空』なんかと同様、恋愛味のミステリーだとみている。
とは言え、地味すぎる高校男子が、クラス1のかわい子ちゃんに言い寄られるが、あからさまな恋愛プッシュではなく、あくまでも好意との狭間、というのはオタク男子の妄想全開で(だからこそラノベだと思っていたのだが)、本作を女子が見て有り得ない/キモいと思わないのか、大いに懸念されるのだが……。ヒロイン役の女の子が可愛いからまだ見られるが、アニメの絵を少し見た限りでは、見通すのは厳しそう。
ヒロインのラストは、普通なら「現実的で良い」と思う私だが、死に至る病のヒロインという本作の設定で、通り魔に殺される必要はないやん?! 普通の恋愛もので、ついに初デートに漕ぎ着けた、というところで片方が突然死する、というならともかく。
単なる嫌味キャラかと思われたガム君(ひでー名前(^_^;))が実はいい奴だった、というところまでは良かったが、ヒロインの親友と結婚するのがガム君、というのはやりすぎ(世界が狭すぎ)。
また、ヒロインの手紙を死後に発掘するのはいいとしても、結婚式の直前に、いくらクラスメイトとはいえ、新郎のいる前で読んで、おまけに下手すりゃ浮気の宣言とも言える「友達になってください」はないやろ。そもそも、ヒロインの形見とはいえ、母親のいる前で日記を読むかな(´д`) 普通、帰って夜に一人で読むでしょ。
まとめると、本作は題名だけの「出オチ」作品だが、実写映画ではフレッシュなヒロインの魅力でなんとか見られるレベルにはなっている。ただ、それ以上の面白さはなかったかな・・・。
あと、男の方の主役がパッとしない(これを「イケメン」ととる女子もいるだろうが)、成人してからも、小栗旬が冴えない若手教師に見える演技をしていたのはさすが。