思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

出版禁止


長江俊和
☆☆☆★
新潮文庫

ややこしいが、『カミュの刺客』という作中作が9割を占め、プロローグとエピローグでサンドイッチされた長編。
有名ドキュメンタリー監督と愛人の心中から生き残った女性を取材していたルポライターによる、未掲載原稿を発掘した、という体裁。でもこのシチュエーションは、出版禁止とは言わないよね?(´Д`)
映画化は不可能ではあるが、サスペンス映画みたいな話。
「裏切られた! こんな経験二度としたくない」「品質保証100%」という帯に裏切られた。こんな経験は何回めだ(´Д`)
前半は、心中の裏に隠された人間関係を探る、文字通りのノンフィクション風の展開。後半は、その女性と同棲することになった記者の手記、という体裁で、純粋なホラー。連作中編か、第一部と第二部、と言っても過言ではないくらいテイストが異なる。

以下、ネタバレ

本作は、三津田信三とかのホラー小説のように、作中作が作中の読者に侵食してくるようなタイプかと思いきや、そうではない。心中事件の真相を探る、ホワイダニットを追う内に、フーダニット、ハウダニットが現れてくる。
だが、本作の主眼というか、ミステリーとしてのメイントリックは、文中に施された仕掛けにある。ただ、その仕掛けは、泡坂妻夫とか倉坂鬼一郎のように厳密なものではなく、ちょっと曖昧さが残る。テイストとしては、綾辻行人のホラーテイストのミステリーに近いかも。
気になったのが、中盤に「テープ聞き取りの勘違いによる変換ミスを直した」という箇所。絶対にここも伏線だと思って読書途中で探したのだが、思わせぶりなだけで、レッドヘリングだったみたい(^^;)