昨年の関東豪雨（但し、執筆&刊行は本作のほうが先）や、東日本大震災を想起させる災害を気に、夫と妻が別の世界を生きるようになった。お互いに、相手が死んだ世界だが、一人息子だけは、父母どちらの姿をも見聞きすることができる。そこへ、パラレルワールドを知り、証拠なき殺人で金儲けをする男が現れ……。
災害云々は、はっきり言ってなくてもいいが、
「土石流の本体にぶつかる前に圧縮されていた空気の壁にぶつかったのだ。」
なんて、ハードSF作家らしい細かい設定も出てくる。
殺人鬼に対し、離れ離れの家族が立ち向かうクライマックスは、『ジョジョの奇妙な冒険』第四部ラストを思わせる。殺人鬼のラストは第5部のほう。そう、パラレルワールドじたいも『ジョジョ』第5部のスタンド、マン・イン・ザ・ミラーを思わせるし、本作は実に『ジョジョ』的なのだ。ほとんど同作のスピンオフと言っても分からないくらいに(^^;)
