思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

隠蔽人類

鳥飼否宇
☆☆☆
光文社

綾鹿市シリーズではあるが、パラレルワールド的というか、他のシリーズ作品を未読でも全く問題ない。私的にも、数作、それも何年も前に読んだだけだが、元々が連続性もないし、共通する登場人物もあまりいない?
事前情報ゼロで読むのがベストなので、良くも悪くもとんでもない展開が待っている作品である、ということだけは踏まえて読めば良いだろう。個人的には、好きではない展開だったが。

以下ネタバレ(ミステリ的なネタバレはしていない)

本作は、ミステリー的な仕掛けのあるSF、というのが最も適当な分類になるだろう。こういう話を書きそうなのは、やはり小林泰三だったけど。
隠蔽人類とは、要するにサメとイルカのような収斂進化で、よく似ているが、DNAは別で、交配しても子孫はできなかったり、一代限りだったりする、それのヒト版。ネアンデアルタール人とホモ・サピエンス、みたいな関係か。
それを発見した科学者たちが巻き込まれる、数奇にして呪われた運命。
四つの各短編が終わるごとに、探偵役は交代し、事態のスケールは大きくなっていく。
最終章まではミステリだが、最終章そのものは完全にSF。
そこてまは、小松左京的な日本とは? 日本人とは? といえテーマが立ち上がって来る。
ただし、そこで描かれる内容は、戦後の自虐史観に基づくもので、小松左京にくらべると、ペラペラ。右側のわたしには到底読めたものじゃない。戦略、戦術も、ミリオタ的な文脈からも、甘い。