『百億人のヨリコさん』
☆☆☆★
ミステリーのようだが、SFであり、ホラーであり、アンチ・ホラーでもある。作者の見解の混じった(士郎正宗みたいな)脚注が大量にあったり、貧乏学生寮のディテールが細かかったり(いしいひさいちか吾妻ひでおみたい)する導入から、そこで定番になっている怪奇現象のエピソードから、物語は一気にドライブする。
そこからは鈴木光司か小林泰三ばりのホラー展開に。
そこから一歩踏みとどまった科学的分析がメタ的で最高に面白い。
ただ、風呂敷を広げるのは最高だが、畳み方としては、ちょっとがっかり。もちろんこういうタイプのオチもありだが(すぐに類例が出ないけど)、それまでが良かっただけに、肩透かしを食らった感じ。
「ゲテモノ要素のある食べ物を「初めて食べた人」というのは勇者でも死ぬほど腹を空かせた人でもなく、ただ単にいしめの一環で「無理矢理食べさせられた」に過ぎないのではないか。」
あと、単なるバカという可能性もあるね。
「幽霊にはなぜか「死後数時間の姿で現れるが、血液は凝固しない。ただし皮膚は蒼白になる」という謎すぎるルール」
「日本人形の髪は、長い毛を真ん中で二つ折りにして頭部に貼り付けていることがある。その場合、触っているうちに真ん中で貼り付けている部分がずれてきて片方が長くなり、外見上『伸びて』しまうことは考えられる。人形の髪が伸びる、というのは霊が宿っているからではなく、よく頭を撫でられたり櫛を入れられたりして、可愛がられてきた証拠」