思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『歌舞伎に行こう!』船曳健夫
☆☆☆☆
海竜社

図書館には、意外となかった歌舞伎入門書。ガイドブックの類いならいろいろあったのに。
本書の特徴は、専門家ではない歌舞伎ファンである著者が、これから歌舞伎を見てみようか、という読者に向けて、障害になる項目や、見に行くと気になる要素を解説してくれる好著。
なぜ、人気があるのかはよく分からなかったが、そのヒントは、子供の学芸会を見に行く母親の心境と、脚本と演出ではなく、演者を見に行く、ということ。
梨園という制度も意外だった。歌舞伎の襲名は、落語と異なり、その世界の住人を演じるのだ。つまりは、ある個人が歌舞伎役者を演じ、彼が舞台劇を演じている、という二重構造なのだ。
このへんは、襲名という確固たる役柄こそないものの、歌劇団という世界のスターを演じる宝塚に非常に近いと思う。
著者が内輪の人間(本書で明言されてはいないが、どうもチケットをもらって評論文を書いているらしい)金をもらっていないぶん、つまらないかもしれないとか、眠る人も多い、と率直に書いているのも好感が持てる。
歌舞伎鑑賞時の醍醐味ともいえるかけ声にも、マナー、作法、ある種の公認がいる、というのも驚き。