『もう時効だから、すべて話そうか』一橋文哉
☆☆☆★
小学館文庫
著者の本は3冊読んでいて、その時には感じなかったのだが、本書ではエッセイっぽい感じのせいか、作者の個人的感想がちょくちょく出ていて、そこが気になった。
ジャーナリストだし、左翼なのはしょうがないとしても、偏見というのはジャーナリストとして最も戒めるべきものでしょ?
それの最たるものが、いわゆる「森元首相・当時オリンピック招致委員長の女性蔑視発言」について、マスゴミの情報操作通り認識していることだ。これ、ほんのちょっとネットで調べるだけで、事実無根どころか、正反対の内容をねじ曲げたプロパガンダの最たるもののに、左翼的偏見で裏取りをしていない。そんなこともできない奴が文章に書くなんて、他のノンフィクション取材の信憑性も完全に失墜だ。
本書は『本の窓』に連載されたものをまとめたものだが、1つの事件を複数の箇所で取り上げているために重複が多く、連載時ならともかく、単行本化する時は煩わしく、整理・省略すべきだと思った。
「三億円事件(略)行員ら(略)爆弾騒ぎで動転した彼らが、実はほとんど犯人の顔を見ていなかった(略)しかも、彼らが「大金を奪われたのによく見ていなかったとは言えないから」と曖昧な証言を繰り返した心情を考慮し、既に死亡していて苦情が出ない前歴者の写真を土台に(略)作成したのが、あの有名なモンタージュ写真だった。」
「01年6月に大阪教育大附属池田小学校に乱入して、児童8人を殺害し、15人に重軽傷を負わせた宅間守元死刑囚(04年9月に死刑執行)は「死ぬことは快楽だ」と嘯き、多くの犯罪者が憧れるカリスマ的存在となった。(略)いざ刑場に向かう時には「腰が抜けて一人では歩けず、大勢の刑務官に腕を抱えられ、引きずられて行った」」
こういうことをマスゴミは大きく報道すべきだと思うが、とんと見聞した記憶がない。死刑反対論者は、死刑のひどさをアピールする要素になるし、抑止効果論者は尚更、喧伝する必要があろう。
「入手経路を徹底的に叩かれたら、組まで潰されてしまう。(略)清原は(略)山口組から稲川会、住吉会まで暴力団の系列を超えて覚醒剤(原文では覚せい剤)を購入し、面識ない中国系売人にまで注文した。それで逆に警戒され、売人から総スカンを食って入手できなくなり、また覚せい剤の使用をネタに脅迫され、そのストレスも加わって薬物依存症が強まるなど泥沼に嵌っていったと見られている。」
「危険ドラッグの大半は中国系の化学薬品メーカーが製造している」