思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

これまで読んだ中では最も完成度の高い作品が詰まった1冊。表紙からはわからないが、本編ではほとんど名前しか出てこなった「モーロック」編も収録されているのだ。
特にマンハッタン編は、絵の完成度が古今東西のマンガの中でも最高峰で、ほぼアール・ヌーヴォーの絵が数十ページ(かける6コマくらい)あると言っても過言ではない。内容も、量子論的な多世界解釈に、マンハッタンならではの時間の移動まで含まれたもので、自在に時空を移動する描写は、SFファンでないと手こずるだろう。

ビフォア・ウォッチメン:ナイトオウル/Dr.マンハッタン (DC COMICS)ビフォア・ウォッチメン:ナイトオウル/Dr.マンハッタン (DC COMICS)
J・マイケル・ストラジンスキー アンディ・キューバート

ヴィレッジブックス 2014-06-10

陪審員
まあまあ普通(主婦ではなく、シングルマザーで芸術家なので、ごく普通とは言えないだろう)の女性がマフィアによる殺人事件の陪審員に選ばれたことから、ひどいことに巻き込まれていく。
家を突き止められ、子供を殺すと脅されて、無罪を主張するように脅迫される。
元が聡明だったからなのか、それともそういう人をマフィアが選んだ(マフィアは全員の身元を調べていたので)からか、彼女の説得によって、有罪を主張していた他の10人も意見を変えてマフィア側が無罪を勝ち取る。
その後、彼女が脅迫されていたことを検察などにバラされることを防ぐため、マフィアは彼女を友人をたらし込み、毒殺する。検察がそれを疑った経緯や、彼女が友人の死をどう受け止めたのかが描かれていないがちょっと弱いか。
検察に協力すると見せかけて、自分で会話を録音して、マフィアのボスに下克上の証拠となる録音を聞かせる。結局ボスの方が彼を殺そうとして返り討ちに遭うのだが、この辺り、ちょっと万能すぎるんじゃないかなぁ……。
そもそも彼女が自分でなんとかしようとせず、素直に検察に任せていれば、子供が狙われることもなかったろうに。
結局、子供を隠していたグァテマラまで殺しにきたマフィアを返り討ちにするのだが、とどめを刺すにをためらったために自分も殺されかける。自分で仇を打ちたかったのなら、そこでためらうのはおかしいし、そうでないなら、検察に任せておくべきだったろう。最後がちょっと不徹底かなぁ……。


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テッド・タリー

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 1998-09-25