思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『シグナル』
☆☆☆★

事前情報なしで観た。主人公が直面するのも奇妙な出来事だが、視聴者も、いったいどんな映画なのか、実に奇妙な体験。
ネットで監視されているのに気付き、犯人を突き止めようと、アドレスを辿ると……。
映像はスローを多用したり、シャープで割りと凝っている。『パッセンジャー』みたいな、ビジュアルに金を注力して、出演料は節約した低予算映画?何しろ顔のばっちり写る登場人物は4、5人なのだ、
基本的に主人公視点で話が進んで行くため、脚本の構成も何もないのだが、もうちょっと彼女との関係のけりのつけかたなど、改善の余地はあっただろう。

以下、ネタバレ。

脚本として問題なのが、彼女の扱い。恐らく彼女にも何らかの肉体的な変化が起こっているのに、それが描かれない。『Gガンダム』のアレンビーみたいに、背中の丸いボタンみたいなので象徴しているのか?それとも服で見えない胴体?それなら、ガールフレンドという設定なんだから、ベッドシーン(に入ろうとしたらそれに気がつく)を入れたら良かったのに。ラストシーンに彼女がいないのも片手落ち。
腕や足が変形した造形は、日本のマンガやアニメみたいではあった。それも良し悪しだけど。

さらにネタバレ

本作は、要するに『ダークシティ』や、数多の作り物世界ものの類に属するもの。中盤から、研究所で隔離された主人公が宇宙人に感染しているのではなく、監視しているほうが人間ではなくロボットで、主人公がいた世界が宇宙船だった、というオチなのだ。
ただしこのオチ、ちと分かりにくい。監視員ローレンス・フィッシュバーンは、主人公たちと同じ症状が頭に出ているのかと一瞬錯覚するし、そもそもこの宇宙船が『宇宙の孤児』的な移民船で、ローレンスがその管理ロボットなのか、主人公は宇宙人の研究対象として親の代から捉えられているのかも不明。
研究所員や警備部隊がヌルヌルなのはロボットだからと、研究対象をなるべく傷つけないためだったのかと分かるが、初見時は、映画的な御都合主義にしか見えないなぁ……。ある意味では伏線的な演出なのだが。
研究所で、親友と換気口ごしに話すあたりで、すべて幻覚で『マトリックス』的はたまた『宇宙人王さんとの対話』的な展開になるのかと思ったのだが……(^_^;)
こんなオチだと分かってみれば、『サイン』の亜流であることはタイトルから明示されていたと言えるかも。『リング』と『ループ』みたいに。