思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ディアスポラ
☆☆☆☆

再度だが、5日もかかった。500ページくらいなのに…。
究極のハードSFの名はダテではなく、主人公たちはコンピューター上で生まれた人工生命。(まっとうな)人間の登場人物はほぼゼロ。舞台は数百年後から始まって、267兆年(!)後まで至る。銀河系を超えて旅したり、この宇宙の終わりを超えたりする話すらちょいちょいあるSF業界だが、時間的にも空間的にも最大級の作品だろう。
『ワンの絨毯』がほぼ真ん中に埋め込まれているなど、数個の短編が短編集的に配置されている。故郷がなくなることを回避するための探検なので、『ヤマト』や『スタートレック』みたいなものだと思って読めば、あらすじは分かるだろう。

「故郷の宇宙で送った人生の他のあらゆる部分は、とてつもないスケールの旅の中に拡散して意味を失っていたけれど、時間を超越したこの世界は、いまも完璧に意味のあるものだった。つまるところ、すべては数学なのだ。」

ラストのこれは、イーガンの小説理念のみならず、SFファンへの賛歌ではないだろうか。

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)
グレッグ・イーガン 山岸 真

早川書房 2005-09-22