思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『みずは無間』
☆☆☆☆
早川書房

SF新人賞ということだが、スケールの大きなハードSFだ。
太陽系外探査機に人格コピーされた主人公が、何万年、何十光年のオーダーで旅をする間に、次々に出会う知性体と、過去の記憶(カノジョの桎梏)が描かれる。
ステープルドン『スターメイカー』『最初にして最後の人類』のような様々なコンタクトや、イーガンばりの電脳的生命創造など、センス・オブ・ワンダー的には申し分ない。
過去のカノジョとのエピソードが個人的には鬱陶しかったが、このあたりはイーガンやソウヤーにもある手法。それに、カノジョの糖尿病や摂食衝動が生命の意味や、物語全体の駆動力にもなっているという構成上の巧さもある(何故か直言されていないが、糖尿病以前に過食症なのが問題なのだ)。
(小説としては分かるのだが)地球の記憶が個人として大事なのは分かるが、客観的には数万年前に死んだ人間の死に方なんて、どうでもいいやん!?
余談だが、カバーイラストの女は、一見美少女ふうだが、よく見ると白痴っぽいというか、まともな精神状態に見えない。これは作品内容を読み込んでそう描いたのか、単なる絵柄の個性なのか…。