思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『青銅の悲劇』笠井潔
☆☆★
講談社

まず、750ページにおよぶ単行本の異常な分厚さはなんとかならないものか。
時代は文字通り昭和から平成に変わるところ。瀕死の王というのは、臨終の床にあった天皇を指す。右翼サイドからすると、天皇を王というのは承服しがたいが、基本的には島田荘司と同じく左翼の笠井氏なので、そのへんはしょうがない。内容も、全共闘をやってた、作者がモデルとおぼしき推理・伝奇作家が主人公だし。
そう、本作は矢吹駆シリーズではないのだ。厳密に言えば名前は出てくるのだが、本人は登場しない。
これだけの長さの長編なのに、メインとなる事件は、毒殺(未遂)事件のみと言っても過言ではない。いちおう(?)殺人事件も起きるのだが、そのへんはおまけ的な印象が強い。中でも、毒殺事件については一章まるまる80ページくらい延々と推理を繰り広げていて、その面倒臭ささは、『黒いトランク』を思わせる。そう、本作はド本格なのだ。すべての可能性を検証してからでないと納得できない、という人以外は楽しめない。

青銅の悲劇  瀕死の王青銅の悲劇 瀕死の王
笠井 潔

講談社 2008-07-25