思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『新戦争論小室直樹
☆☆☆☆★

三読。何度読んでも納得させられる名著。安保法案にピント外れの脳にお花畑ができている人たちに読ませたい、全日本人必読の国際関係論の教科書。

「本当の平和主義者であれば、まず戦争の本格的研究から始めなければならないはずである。戦争が起きれば平和ではないから、戦争が起きるための条件、不幸にして戦争が起きてしまったらどうするか。これらについての十分な研究なくして、平和主義者たる資格はない。」

「「平和主義」の基本的欠陥の1つは、敵を過小評価したところにある。撲滅すべき敵である「戦争」を軽くみてしまったのだ。(略)戦争は、個人の良心の問題として片付けられるほど、単純素朴な事柄ではない。
戦争は、国際紛争の解決を目的とした、巨大な努力の体系である。戦争に訴えるか否かの重大な意志決定を行い、人的資源を戦争遂行のために組織的に動員し、刻々と推移する客観情勢を的確に判断して最適な戦略を見いだしながら、国家機構を操作することである。(略)それほどの巨大な努力は、(略)万やむをえないのでなければ、(略)そんな努力が行われるほど、人類社会は不条理ではない。(略)戦争はやめればよい、という意見が本来誤りであることは、これをもってしても、明らかであろう。」

戦争と平和とは対立するものではないから、戦争を回避すれば平和が維持できるというものではない。(略)平和とは、そのような状態を、安定し均衡した形で長期間維持するためのシステムである。きわめて複雑で微妙な人工的仕組みである。」
清帝国の実権者であった西太后は、義和団という暴力団におだてられて列国に宣戦する。それだけでも暴挙なのに、列国の公使館員と居留民とをとりかこんで殺そうとする。あまりのメチャクチャさに列国は出兵して武力で自国民を救うほかなかったのだが、戦闘が終わると、列国は、ほんのひと握りの駐留兵を除いて中国から全面撤退した、このとき、ロシアだけは例外であって、どうしても満州から出てゆかないのだ。(略)こうなると地続きの朝鮮があぶないのである。」

「「戦争とは、国際紛争解決の最終手段である」(略)どんなむくつけき侵略戦争も、たとえば、その領土をよこせ、イヤだ、という紛争が前提になければ、起こるはずがないのだ。」

「一方の交戦国が中立国の領土を軍事的に利用しようとした場合、実力をもってこれを排除する義務がある。つまり、実力をもって中立国の地位を積極的に維持する意志と能力がなければ、誰も中立国とは認めてくれない。」

「国連は第二次大戦の終結前、連合国側によって作られた。だから、国連は、連合国の戦争遂行機関であり、戦後の新しい国際秩序の執行機関であり、旧敵国の管理機関なのである。」