思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

専守防衛清谷信一
☆☆☆☆
祥伝社新書

タイトル通りの内容だが、裁判官と民主主義、警察官僚が防衛省を支配している(内局のこと)、国家警察(FBI)を作れ、海上保安庁を国家保安隊にせよ、など幅広い。

自衛隊の衛生兵に当たる「救護陸曹」は救急隊員や看護士の資格しかないので、治療も投薬もできない。(略)戦争で人が死んだり、怪我や病気になったりすることを想定していない。」
バカバカしいことだが、憲法からして戦争をしないことになっているから、得てして知るべし。有事法制もまだまだ穴だらけ、ということか。

「日本が中国へ多額のODAをつぎ込んだことで、道路や橋梁、空港、鉄道などの社会インフラが整備された。これらは人民解放軍の動員力、兵力投射能力を大幅に高める結果となった。要するに、中国に武器を供与したのと変わらない効果があった。
 同じインフラの整備ーーとくに中国国境やカシミール地方に通じる道路や鉄道の整備、そして空港の整備をインドに対して行えば、インド軍への動員力は格段に向上する。」
これこれ戦争をしない国家の外交だ。

「中立を保つためには、相手に軍事的な手段による制圧や占領が不可能だと思わせるほどの強大な軍事力、高い外交力、充実した民間防衛システムの構築などが必要である。スイスはこれを忠実に実現していた。
 ある国から占領され、その領土や領海などを他国の攻撃に利用されれば、中立を維持したとはいえない。中立は必然的に重武装となり、国民に対して、精神的かつ経済的な負担を強いるシステムである。」
スイスを例に挙げた、中立を維持する為の現実的方法。非武装中立がお花畑的迷妄であることの証拠。他にスウェーデンの例も参考になる。

専守防衛 日本を支配する幻想 (祥伝社新書 195)専守防衛 日本を支配する幻想 (祥伝社新書 195)
清谷 信一

祥伝社 2010-02-27