思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

アイアンマン3
☆☆☆★

『2』は見てないが、構造的には『1』と大差ない話。
主人公がピンチになって、自らの科学技術でアイアンマンスーツを改良して解決するのだ。
『1』にここまでコメディ要素はなかった気がするのだが、少なくとも今回は最初から最後まで各所にお笑いが入っているバランスが良い。
また、人型メカがバラバラに分解して飛んで来て、装着/合体する、という日本アニメのお約束をリアル(っぽく)に描いたのも日本のオタク的には見逃せないポイント。
それだけでなく、スーツが分解する、という設定を十二分に活かした展開がバリエーション豊かに描かれているところにも、脚本が錬られてるなーと感じさせる点だ。
他にも、動力を失ったスーツの「モノ」感など、スーツへの考察(愛着)によると、ぼんやりとした視聴者の上を行くセンスオブワンダーが素敵。
惜しいのは、人工のウィルスによるものとはいえ、溶岩人間ともいうべき敵の設定がファンタジー的すぎること。なんか『ファンタスティック・フォー』みたいで、いちおうリアル路線の本シリーズには合ってない。
あとは、序盤のトニー邸の基地で映ってたとはいえ、最後にアイアンマン・バリエーションともいうべきいろいろなタイプが同時に出てくるのだが、夜シーンであることに加えて、バトルシーンもそこまでじっくり見せてられないので(そもそも数が多すぎ。10体前後?)、イマイチ違いが分からないのだ。このへんは、オモチャなど、マニアや子供向け玩具屋さん向けの仕掛け?
おまけに敵を倒した後とはいえ、無傷のスーツを自爆させてしまう。シリーズが3部作完結編、ということを強調したいのかもしれないが、現実的リアリティで考えたら、いつ、どんなテロリストが現れるか分からないのに…。


『帝国興亡の掟』黄文雄
☆☆☆★
光文社

確かに黄先生の本は、日本人学者には書けないことがたくさんかいてあるんだけど、校正がまずいんだよなあ…。編集がボンクラなのか、はたまた校正をろくにしないのか…。
まるで単元(章ではない)ごとに、別々のエッセイを集めたようだ。
つまり、少し前に書いた、ほぼ同じことをすぐ次の単元でも書いていることが多い。著者がゲラチェックをろくにしない人であっても、そんなのは編集者がちゃんとチェック(校正)してればわかることなのに。
ま、それはおいといても、本書では随所に豆知識的な情報は載っているものの、ローマがなぜ滅びたのか?諸説あってよく分からないとか、自分で振っておいて、オチなし、ということが多いのが残念。これまた校正の問題か。

「国家財政が皇室の家政に編入され、国(家)と帝室(家)の区別は明確でなかった。そこから「国家」ができたのである。」

「呉の人口は230万しかなかったが、(略)兵士が23万人もあった。(略)これは十人に一人が兵士」

「ローマ人にとって(略)市民のほとんどが奴隷を所有しているため、雑役は奴隷任せで、市民たちはヒマをもてあましていた。
 コロセウムで剣闘技や競馬に興じる以外にすることがなかったのである。」

「秦はほんの15年間で崩壊してしまう。そして、漢帝国崩壊後の400年間にわたる混乱期を経た後に統一国家として登場した隋も、2代のみの37年間しか続かなかった。」

日本人にとっては、日本史で「聖徳太子小野妹子を遣隋使として遣わす」と習うせいもあって、隋の印象は強いのだが、なんとたった40年弱なのだった。

「第二次日本遠征に駆りだされたのは十万人規模の江南軍である。フビライにとって「江南軍」とは、ボートピープルとは言わないまでも、「棄民」ならぬ「棄兵」であったのだ。」

朝鮮人が使われたのは知っていたが、支配者以外のダメダメ支那人も含まれてたのか。何度か書いているが、中国やロシアがせめてきたら、無条件降伏すれば良い。なんて言っている人は、是非とも「歴史に学べ!」

「歴代皇帝に比べれば、清王朝は開国以来、一人の暗君も出していない。」

ある程度支那史を知っている人には言わずもがなだろうが、清王朝は、漢人ではなく、「異民族」が中原を征服して建てた王朝である。西欧史的に普通に分かりやすく言えば、「満洲(人)が中国を滅ぼして、領土を支那にまで広げた」ということだ。

「強大な国家を維持するには、いかなる自国の発展も繁栄も犠牲にして、膨張するしかない。(略)これがロシアと中国が共有する国家観である。」

帝国興亡の掟 中華帝国とローマ帝国に見る世界帝国の野望と失意帝国興亡の掟 中華帝国とローマ帝国に見る世界帝国の野望と失意
黄 文雄

光文社 2015-01-16