思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『嫉妬事件』乾くるみ
☆☆☆★
文春文庫
我孫子武丸氏の解説によると『ウロボロスの基礎論』で描かれた(この解説読むまで忘れてたけど)京大ミステリー研究会の部室の本棚にうんこが置かれていた事件は実話なのだそうだ。乾くるみは京大ミステリー研究会ではないが、それを聞いて、『十円玉五十枚の謎』ばりに真相を推理した結果できたのがこの軽めの長編。
ただ、ド本格の宿命とはいえ、建物内のトイレに何時からうんこが放置されてた、とかいうのを延々(に感じる)議論されてもなんか「……(・_・)」という感じ。
真相とされるものにしても、やっぱり「うんこ」である必然性は納得できなかったなあ。
作中でも解説でも全く触れられていないが(ちなみに『ウロボロスの基礎論』では触れられてた)、やっぱりこれ、山田風太郎『うんこ殺人事件』だよなあ…。タイトルも『うんこ爆弾』とかにすべき(^_^;)。このタイトルにこの表紙は、詐欺だわなぁ…。)
登場人物の名字は、ミステリー作家から取ってあるのかな?一部適合しない(知らない)のもあったけど。
おまけとして『三つの質疑』(『嫉妬事件』の登場人物が書いた犯人あて小説というてい)があり、これがかなりひねくれたメタメタな作品。


クォンタム・ファミリーズ東浩紀
☆☆☆★
新潮社

もいちどあなたにあいたいな』がもっとも近い、と書くとネタバレになる…?
平行世界の家族たちが時空を超えて交錯するSFミステリー。
もちろん、途中までは、生まれ変わりものの本格ミステリなのか、平行世界SFなのか、の区別は付かないわけだが…。
小説としては、家族と(異常?)性癖とアイデンティティをテーマにした作品。
いかにもリベラル評論家らしい佳作と言えば乱暴に過ぎるか。