思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

小室直樹の中国原論』小室直樹
☆☆☆☆★
徳間書店
96年の本。中国に進出した企業が契約違反、朝令暮改で苦汁を舐めるのはなぜか?
中国の歴史や社会制度など、根本から解き明かす快著。
「刺客(略)は中国独自の存在であって、アメリカの殺し屋(略)とも、日本の鉄砲玉ともちがう。
刺客は尊敬され社会的地位も高い。(略)歴史書で刺客は、政治指導者、軍人などとともにヒーローである。」
そう言われれば、映画『英雄』が、まさにそういう話だった。
「ひとを訪れてゆくということは、中国ではこれほどの意味をもつ。
訪れてゆくほうが下、訪ねられる方が上、礼では必ずこうなる。(略)外国の王や大統領、首相が訪問すると、朝貢にでもきたと感じてか、すごく喜ぶ。」
宮沢首相のときの天皇訪中とか。
「「姓」という文字は「女」偏に「生」と書く。これをもって超古代の中国は母系姓であったと推定する学者もいる。(略)中国では超古代においても、神のような超人にも姓があった。」
「大量の労働人口の流出と農村過保護政策によって、高度成長の十年間に日本の村落共同体は壊滅した。(略)そこで、機能集団たる会社(企業)などが共同体に成ることによって、巨大な急性アノミーを引き受けることにした。この理由によって、日本の会社(企業)は共同体となった。」
「何故大蔵省が銀行をなかなか潰さなかったかというと、潰すと天下り先を減らすことになるから」
「中国では(略)破産が大変しにくい状況になっている。(略)そのことがどのような意味を持つかというと、毎月赤字を出していたとするならば、それをずうっと続けなければならないということだ。経営が改善される見通しがなくても撤退することが許されず、累積赤字を積み重ねなければならないということなのである。中国において経常赤字を出している企業は、そのために尋常でない七転八倒の苦しみを味わわなければならない。」