日本教ならぬ天皇の日本に於ける位置を論じた本なので、その前段として世界の各宗教の解説が必要なのは分かるが、内容的に『宗教原論』とほぼ3/4が同じなのはなんとかならないものか。
ま、この本だけ読む人もいるわけだから、1冊の本としてはそうならざるをえないのかもしれないが…。
本書では日本民族とユダヤ教の共通点を挙げ、さらには天皇とキリスト教の共通点をあぶり出した面白い指摘がなされている。
それを現在の日本と天皇のあり方に当てはめるかどうか、各宗教を信じるかどうかは全く別の話として。
「ユダヤ教、キリスト教においては、奇蹟が宗教の中心に据えられている。奇蹟こそ、実に、宗教の担保者である。奇蹟あればこそ信じられる。(略)信仰を捨てた理由として多いのが、福音書における奇蹟が、どうしても信じられない。こう告白されている。」
「「皇国史観」とひとくちに言ったって、
(1)栗山潜鋒(略)を代表とする崎門の学(略)。
(2)平泉澄博士(略)
(3)戦前・戦中(終戦直後)までの日本文部省製作の国史教科書、修身教科書などにおける皇国史観。
これら三者は(略)全然、違ったものである」
「天皇」の原理 小室 直樹 文藝春秋 1993-06 |