思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『日本いまだ近代国家にあらず』小室直樹
☆☆☆☆★
「日本人には汚職をデモクラシーのコストと考えるセンスがなかった。膨大なカネが掛かるものだということを国民が理解しなかった。」
「立憲政治の基礎(略)
まず第一番目に、選挙公約は飽くまでも守らなくてはならない。守れないなら下野すべし。(略)
第二番目に、対立政党の政策を勝手に盗んではいけない。
第三番目に、君主の信任があるという理由だけでは、政治権力を持っていてはいけない(略)
そして、一番大事なことは、議会における論争によって国策や政権党が決まること。」
見事なくらい民主党政権はことごとくこれから外れている。
「最高の政治道徳とは無関係国民の経済生活を保障することである。良い経済政策を成功させることである。であれば、為政者の個人的な道義・道徳は問われるところではない。」
「不況になって、世の中の人たちの給料が下がったり(略)人員整理に遭ったりすることは、一人一人の官僚にとって、本当は気分の悪くない話なのだ。
役人の薄給は、世間の人たちの給料が下がることによって、相対的に上昇したことになる。心の底で、役人たちは景気の良くなることを望んではいないのである。」
だからバブルをつぶし、絶対にデフレ解消政策をとらず、消費税を上げたがるのか…。もちろん、これらは政治家の任務だが、本書で何度も指摘されているように、田中角栄以後の日本は官僚政治に堕している。
「「自由主義とは、政治の権力から国民の権利を守ること。民主主義とは政治権力に国民が参加すること」この二つは全然違うことである。」
「「裁判とは手続きなり」(略)刑事裁判において、全て完全に合法的な手続きによって得られた証拠以外の「証拠」は、これを法廷に持ち出すことが出来ない。証拠とすることが出来ない。
つまり、非合法な方法で得られた「証拠」は、証拠ではない。」
田中角栄(略)死に(略)よって日本政治は何を得たのか。
政界は四分五裂の時代を迎え、議会で自由な議論を通じて国策を決定する気運は、最早見る影もない。立憲政治の終焉である。
更に国権は政治家不在、官僚がこれを簒奪し、法律を作り、解釈し、施行するのは役人の一手販売と堕してしまった。デモクラシーの窒素である。
又、絶対主権の所有者であるはずの国民はどうか。(略)公益・国益といったものの重要性、否、存在そのものを忘れ、「個人の原理」と「集団の原理」を同次元に説くマスコミの“無知”にまんまと乗せられ、私利・私益以外に、その関心を示すところが殆どない。」
約二十年前に現在の状況をズバリと予言しているではないか。

日本いまだ近代国家に非ず 国民のための法と政治と民主主義日本いまだ近代国家に非ず 国民のための法と政治と民主主義
小室 直樹

ビジネス社 2010-12-21