思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

この作品で言う絶対とは、汎神論的な感じ。
対消滅的な、原子を完全に燃焼させることで莫大なエネルギーが得られるとともに、その物質にあった“絶対”が解放される。
それがはじめは神の意志というか、敬虔な気持ちになったり、奇跡を起こしたりできるという、いかにも西洋SFらしい展開。
ところが、連載故のブレなのかどうか分からないが、全世界を巻き込んだドタバタから世界大戦に発展する、という展開に。これが第二次大戦前に書かれていたというのが面白い(凄い)ところ。
ただ、それも深刻な、というよりも昔のSF、筒井康隆星新一を読んでいるようなドタバタというかコメディチックな雰囲気が覆っている。
そういう意味で全体的に科学的というより、思弁的なテイストゆえか、一世紀近く前のSFであるにもかかわらず、現代でも普通に読めてしまう佳作。

絶対製造工場 (平凡社ライブラリー)絶対製造工場 (平凡社ライブラリー)
カレル・チャペック 飯島 周

平凡社 2010-08-11