源氏物語(1987)
☆☆☆★
当時は雑誌「ニュータイプ」とか読んでた筈だから、当時制作のアニメ映画で知らない作品なんてないと思ってたけど、あったんだねぇ。テーマもビジュアルも徹底的に地味だから、右から左にスルーしたのかもしれないけど。
ただし、映画ファンになった今の目で見ると、なかなかアート映画系の渋い感じ。
実際にそうで、印象としては『天使のたまご』と『かぐや姫の物語』を足して2で割ったような感じ。
キャラは(原案でも何でもないけど)天野善孝っぽく、影を入れないフラットなビジュアル。平安絵巻物の雰囲気も狙ってるのかな。調べてる間に知ったが、着物の柄は、実際に写真に撮ってトレースした、ある種のプレスコ的な手法で描かれている。アニメ版の『指輪物語』みたいな。なので、そう言う意味での立体感はある。
ストーリーは、あんまり詳しくない、というか、昔『大把源氏物語まろ、ん?』を読んだりもしたけど、さっぱり覚えられない(^^;)
「ガワ」だけに触れれば、ボイスキャストは、俳優が7割、プロ声優が3割と言う感じだが、上述したような非マンガ的なキャラなので、違和感はほぼない。
劇伴は細野正臣なので、和風っぽくしてはいるが、テクノなものも多い。それこそ川井憲次とかだったら、ひとまわり平安世界に浸れるものになっていたろうに……。
八十年代後半ながら、純粋に費用対効果が高い、舞い散る桜の花びらなど一部にCGが使われていたり、篝火は実写と合成されていたり、アート系というか、実験映画的な側面も強い。
元からそういう作品だから、夜這いシーンもあり、上半身が顕になるカットもあるが、何せ影のないセル画でもあり、いやらしさはまるでない。
あとは、呪いのシーンなどに、ドラッギーな表現で演出しているのはいいが、映画のラストの畳み方までが、そっちに逃げているのはいかがなものかと思った。
純粋に目をつけた娘(自分の娘で、大きくなったら自分の女または妻にしようと目論んでいる)と別れる辛さや、僻地に飛ばされる哀愁とかを表現すれば良かったのに。