思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ミッキー7


エドワード・アシュトン著/大谷真弓訳
☆☆☆☆
ハヤカワ文庫SF

ラッキーセブンとかけているのかいないのか、原作も同じ。デイヴィッド・ブリンのゴーレムものと似たような設定だが、恒星間移民船の、人体実験要員として使われる、という設定に放り込まれた主人公は、何度も悲惨な死を迎える事になる。
「セーブ」した時点の状態に、3Dプリンタ的なもので再生されるため、死んだ時の状況そのものは憶えていない、というのがポイント。
そういう設定から、冒険SFかと思いきや、危険な任務を任される、広義のミステリー的な内容であり、ある意味、『ねこたま』のように、良質のSFにはミステリー的な構成が取られているという自論からしても、王道のSFとも言える。
作中でも主人公は「消耗品」と書かれてエクスペンダブルズとルビが打ってあるので、邦題はあの人気シリーズにあやかった『エクスペンダブルズ』でも良かったのらでは?(^^;) 今さら、あの映画の小説版が出ることはまずないだろうし。

以下ネタバレ

その設定からして、『七回死んだ男』みたいな展開かと思いきや、物語が始まってすぐ、死んだと思われた主人公の、第8号が生産されており、それを外部にいかに画すか、というお話になる。単なる映画『セブン・シスターズ』みたいな、知人をいかに誤魔化すかだけに留まらず、開拓団という設定なので、配給も限られていて、一人分を二人で分ける必要があるから、「自分」どうしで喧嘩することになる、という面白さもある。
中盤以降は、現地のムカデ型生物との戦いから、その生物の謎というか、生態を暴く、ファーストコンタクトものの王道的要素もあって、全方位的に楽しめる作品。