思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ブラックボックス 音声分析捜査


☆☆☆☆

フランス映画で、原題もたぶん同じ。山地に墜落し、300人全員が死亡した航空機事故が発生BEAなるフランスの航空機事故調査委員会の敏腕分析官である主人公は、それを手がかけることになるが、しばらくしてチームの上司から担当を外され、その後、その上司も失踪してしまう。再び担当となった主人公は、事故の真相を探る。
やっていることは、ほとんど『科捜研の女』だなぁ……と思っていたは、全体の展開もほとんど『科捜研』だった(^^;)
主人公は、クリッとした目と、鳥の嘴のような三角の鼻が印象的。ある種、偏執症、イディオ・サヴァン的なキャラを魅力的に演じている。
主人公の妻は、航空業界のやり手で、しかも美人すぎるときた。ただし、エリート・ビジネスウーマンすぎて、どう見ても主人公とうまい夫婦生活を営んでいるようには全く見えないのは、人間ドラマとしては本作唯一の難点か。いや、私的に、ベッドシーンどころかキスシーンもない、サスペンスのジャンル映画に特化したところは大賛同なのだが。
冒頭から事件の解決に集中していて、脱線もあまりない。サスペンスとしては十分なおもしろさ。
ただし、色んな人の感想と同じように、最初に提示される純粋な音声データに全ての謎と伏線があったのではない、というのが惜しい。
「音声探偵シリーズ」とかがあって、その中のひとつのエピソードならありだと思うけど。

以下ネタバレ

最初の容疑者でえるイスラム過激派の人が、実は無罪だった、というのは他の映画でも観たような。リベラルな映画業界ならでは行きすぎた配慮の典型。
それはともかく、データが改竄されていて、終盤は改竄前の基盤も探す、スパイものになってしまうのが、皆の共通のがっかりポイント。
真相はというと、客席からの自動操縦プログラムへのハッキングなのだが、犯人は死んでいるので、何の目的でやったのかわからないのは、大いにモヤモヤする。いちおう、「真相」として描かれる映像(想像)では、犯人は機体が降下しかけると、あわててハッキングを解除しようとしているのだが、そのパソコンは墜落時に燃えているだろうから、主人公が見ているのはあくまでも改竄前のフライトレコーダーでしょ?
それを失踪した上司の家で見つけた主人公が、謎の二人組に追われるので、どうやら犯行は組織的なバックがあったらしいのだが。普通はその組織の誰かに、犯行の目的を語らせるもんだが、それが一切ない。本作では、それをすると、作品内の構成としてボロが出るから、やらなかったんじゃないの? と言いたくなる。
それはともかく、逃走劇の果てに、主人公は殺されてしまうのだ。データを受け取っていた妻が、それを公開して、雪辱を果たす、ほろ苦いラスト。