思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

死刑にいたる病

☆☆☆★

話題になっていたのは知っていたが、オープニングを観て初めて原田眞人監督作品だと知った。確かに、半ば白骨化した屍体や、手首足首の骨が飛び出た特殊メイク、爪を剥ぐサディズムなどは、『狐狼の血』と共通する。
主役(?)は、素直な高校生男女を拉致し、爪を剥いだりして虐待してから殺す、阿部サダヲ演じるサイコパスの連続殺人者。
彼と遠縁にあたる主人公は、刑務所にいる阿部から手紙をもらい、告訴されている7つの連続殺人のうち、一つは自分がやったのではないから、犯人を探してほしい、と依頼する。
主人公は、弁護士見習いとして、事件を調べ始める。このへんがちょっと都合良すぎる気がするが、まあいいか。そもそも、刑務所の凶悪犯からの依頼で事件を捜査する、というのが『二流小説家』であり、まあ『羊たちの沈黙』以降の、ひとつの定番を作ったうちの一つであると言える。
本作の見どころは、阿部サダヲの二面性というか、サイコパスならではの演技。『冷たい熱帯魚』のでんでんが体育会系との二面性なら、阿部サダヲは普段は人当たりの良い、善良かつ常に冷静なタイプ。裁判でも興奮することもない。こちらのほうが典型的なサイコパスっぽいかも。瞳が『ジョジョ』第4部の吉良のように漆黒なのは、CG処理しているのか、ホントに演技なのか……。
先に書いた、アキレス腱から飛び出た骨の周りに指を突っ込んだ際の絶叫が、ホントに痛そうだった(@_@)

以下ネタバレ

いくつかのレビュー動画も観たが、ラストは一筋縄には介錯できないようになっている(意図的に、うまくないからか?)。
阿部サダヲの真骨頂は、相手に自主的に悪を犯させることで、冤罪だと主張していた殺人も、彼がターゲットに選んだ人物にさせたのもかもしれない。また、親子かもしれない主人公の恋人にも、悪の種子を植え付けていたらしい。
ある意味では、『ソウ』的な、後継者をつくるというか、感染者を増やすことが真の邪悪な所以なのかも。