☆☆☆★
確かにキツイ映画。グロ描写もそうだが、平凡で冴えない中年の父親がとんでもないことに巻き込まれる、という意味でも。物心両面において追い込まれる。
この映画の衝撃を最大限に楽しむには、事前情報は少なければ少ないほどいい。
なので、私的には、オチのネタバレはなかったものの、展開は知っていたので、ちょっと残念だった。
色んな意味で非常に不快な内容なのに、先が気になってグイグイ観させられたのは、作品のパワーゆえだろう。不満点もあるが、凄い映画であることは間違いない。
映画としとは、音楽演出が不満あり。ベッドしーんで、ラジカセでハワイアンをかけているシークエンスでは、流し始めはいいとしても、後で片方が死んで、死体処理をどうするか、というシーンでも、登場人物がラジカセを止めるまで、ずっとハワイアンが鳴っているのだ。そんな感じで、劇伴的には、いわゆる外し演習が多い本作だが、ラストシーンのクラシックは、はっきり浮いていた。せっかく良い(衝撃的という意味で)なのに、残念だった。
以下ネタバレ
冒頭に「based on true story」と出るように、本作は実際にあった事件を元にしている。いわゆる埼玉愛犬家連続殺人事件である。とは言え、ノンフィクションなのは、連続殺人の手法くらい。
少し調べて、いちばん笑えたのが、主犯役のでんでんが、本人に割と似てたことより、その妻が完全に「中年のおばちゃん」で、映画の、若く、西川史子似の女優さんとは対極であること。となると、両刀の色情狂というのか、メスライオンみたいな性格設定もフィクションだろうなぁ。後妻業の女みたいな物心両面のテクがあったのかもしれないが。
この映画内での最後の被害者である社元も同業者という以外はまるまるフィクションだろうなぁ。
ちょっとわかりづらかったのが、社元の後妻。食事が超テキトーなので、愛情が冷めている(冷たいのは熱帯魚じゃなくて食事風景やろ(´Д`))演出のは分かるが、再婚したのは去年か一昨年じゃなかった??
グロいとは言われているが、確かに血まみれのサイコロ肉片や頭蓋骨とか大腿骨は映るものの、解体する進行形のシーンは映さないので、そこはがっかりしたところ(^^;)
そのくせ、切断された陰茎はボカシなしで映せるのね(´Д`)
追い詰められた社元が逆襲するであろうことは想像がつくので、でんでん社長がいつガハハ/懐柔モードから殺人/説教/凶悪犯モードにシフトするのか、というのと同様に頭の片隅から離れないのだが、単に返り討ちにするのではなく、社元は小心者モードから、反転して暴君モードになったのが意外で面白かった。
また、でんでん社長も、本性を表した後は、100%の極悪人ではなく、時折豪放磊落な、世間向けの顔もちゃんと社元に見せる二面性があるのが、リアリティがあって怖い。
ラストは、社元がでんでんを殺すのみならず、夫人まで殺した、そこまでは想定内にしても、自分の妻を殺し(ほぼ強姦とはいて、でんでんに身を任せたから?)、あげくに死体遺棄の幇助に、3人を殺した責任感なのか、娘の目の前で自殺するのには驚いた。娘に、生きることの厳しさを教える意図もあったのだろう。
ところが、それを見ても娘は茫然自失するどころか、「やっとくたばりやがった」と高笑いするのだ。
これを非常識、非道徳だと糾弾するのは容易いが、これは、ここに至って、この物語の真の主人公が、最後に前面に立ち現れた