思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ドラゴン•タトゥーの女


☆☆☆☆

地味なアート系映画でしょ? と思っていたが、『セブン』や『ファイト•クラブ』のデビット•フィンチャー監督だと知って、観る気になった。
いや、普通に探偵小説的なミステリーとして面白かった。クリスティからの定番たる、一族もの。数十年前に突然神隠しのように消えた娘を探してほしい、という依頼だ。
主人公は、ミレニアムという雑誌の敏腕記者だが、検事の汚職を追求したら、反撃を食らって大ダメージを受けていたところに、上述の依頼を受ける。
そして、首都ストックホルムでは、監察処分中の不良少女と、弁護士との性的加害関係が描かれる。こちらは、全然本筋と関係ないやん……。そうか、彼女こそ失踪した女、いや、年齢が合わないからその娘なんや! と思ったら違った(^^;)
中盤で明らかになるが、彼女は凄腕のハッカーで、主人公に調査を依頼する富豪が、身元調査に雇った人物で、その彼女が主人公と共に失踪事件の捜査をすることになる。
ちなみに、主人公は近年の『007』でお馴染みのロシア人っぽいダニエル•クレイグ。北国人役としてはピッタリかも。ただし、本作の役柄としては完全な文系で、敵に捕まって殺されかける(あ、この辺は本家『007』でも一緒か)。強いのは、ドラゴン•タトゥーの女のほうで、本作はいわば逆『007』と言えなくもない。オープニングが格好いいのも同様。
ミステリーとしては、歪な構成だが、編集のテンポが良いのか、普通以上に面白い。内容じたいは、いわゆる邦画ミステリー大作、みたいな頼りなさが漂うのだが……。主人公が編集長と不倫しているとか、どうでもいいし。いや、映画のテーマとしては意味あるんだけど。
ヒロインの脱ぎっぷりもよくて、体当たり演技って感じなのだが、パンクな見た目なせいで、エロさは控えめ。

以下、ネタバレ

主人公が権力の汚職追及失敗したくだりとかは、失踪事件の謎とは全然関係ないので、カットすれば2時間以内に収まったと思うのだが、約3時間もあるのは、欲張り過ぎた内容のため。ドラゴン•タトゥーの女の半生とプロフェッショナルの中に抱いた恋心、という、映画2つ半くらいの内容を詰め込んでいるのだ。町山解説によると、原作ではさらにナチス関連のミスディレクションまであるらしい。いわるる海外のブロックバスターものにありがちな盛り込みすぎ。
特にこの映画においては、逃亡する犯人が事故死して、失踪した女の事情を聞いてからも、主人公が追求した検事にトドメを刺すためのドラゴン女の「スパイ映画」が10分くらいある。これには何の障害もないので、全くハラハラしない。長すぎるエピローグと言うべきもの。これがあるので、(謎が分かって)全然スッキリ終われない。