思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

黒い家

貴志祐介
☆☆☆☆
角川ホラー文庫

ホラー映画としては名の知れたものだが、未見。本作は、『呪怨』(こっちも未見だ(^^;))みたいに、とある家に幽霊的なモノがいる、という話だとばかり思っていた。
ところが、バリバリに地に足のついた、サスペンス/ミステリー。
保険会社に務める主人公を通じて、保険の支払いにまつわる知識も得る事ができる(残念ながら、庶民目線で、保険選びの知識は得ることはできない(^^;))。
主人公が、と契約者の一人である、ある黒い家の住人から呼び出しを受けて訪問したところ、息子が首をつっているのを目撃したところから運命が狂い始める。呼び出された男が息子を殺したのか? 連日営業所にやってきて督促することでノイローゼになった主人公は、心理学を学ぶ恋人の研究室へと相談にゆく。

「後にコナン・ドイルがこの話を聞いて『シャーロック・ホームズの事件簿』の中の『ソア嬢』という有名な短編を書いた」
これ、超有名な古典だが、元ネタがあったんや。

「保険会社の営業所部長は常に厳しいプレッシャーの下に置かれている。(略)ノルマに達していないと(略)給料泥棒と罵られ、人格を否定されるような叱責(略)支社長に蹴りを入れられたり床に正座させられたりするところもある」
これ、フィクションなのか、作者が見聞したり調べた事実なんだろうか。

以下ネタバレ

本作は心霊とは無縁の、「人間コワイ」系のサスペンスで、『殺人依存症』や『蟻の家』とかに近い、毒婦ものというか、サイコキラーもの。
特にやる時は容赦無く人を文字通り切り刻む鬼畜っぷりは半端じゃない。そのものの描写はないが、研究室の助教あたりの恋人の知人を、生きたまま一部刻みに拷問する、というのは映画『オーディション』や『ザ・セル』以上の強烈さだ。
最初に主人公を呼び出し、連日通い詰めた男ではなく、その妻こそが黒幕、というツイストもミステリー的に効果を挙げている。