思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

虹の歯ブラシ 上村らいち発散

早坂吝
☆☆☆★
講談社文庫

上村らいち、すなわち援助交際探偵シリーズ第二弾。
彼女は曜日ごとに売春相手を変えて、歯ブラシも7本すなわち虹色のものを揃えている。ってことは当然、買春側も知っているはずだが、そのへんはあまり触れられない。らいちが絶世の美女だから、そんなことは些細なことなのだろう。こういう設定を恥ずかしげもなく出してくるあたりは、清涼院流水以降だなぁ、という気がする。
本作は、虹の色にまつわる名前の登場人たちが、事件の関係者となっている事件の謎を、らいちが解く、という短編集。ある時は容疑者の愛人として、ある時はラブホテルの隣室にいたものとして、またある時は館の殺人の渦中に巻き込まれて、そしてまたある時はSF的な状況のショート・ショートとして出てくる。
中でも『青』は、らいちが書いたミステリを問題編として語る、という趣向で、リアリティはともかく、新本格としてはなかなかなの佳作。トンデモ系アンソロジーが、あったらリスト入り間違いない。
最終章では、予想の斜め上を行く趣向が。

以下ネタバレ

その趣向は、いわゆるひと昔前の創元推理文庫のそれで、まさかの多重解決ものかつSFミステリという凝ったもの。語り手が作者になるところも楽しい。解説が深水黎一郎であるところも、『ウルチモ・トルッコ』を連想させる。