思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

暗黒の羊

三輪和音
☆☆☆☆
創元推理文庫

『炎上する羊』☆☆☆★
SNS中毒の妻の暴走をどうやって止めるか。事故映像と倫理の問題など、社会派的な側面も。冴えない中年男と、年下の妻、という関係に共感しやすくなくもない。限りなくホラーサスペンス寄りのミステリー。

『暗黒の羊』☆☆★
高校の部活動がテーマ。不良部員の非行が発覚すると連帯責任を問われるから、開き直りどころか逆脅迫される、というあたりの動機(ネタバレではない)が面白いが、青春小説としてはともかく、ミステリとしては弱い。

『病んだ羊、あるいは狡猾な羊』☆☆☆★
逢坂剛『カプグラの悪魔』を連想させる、同じ症状をテーマにした作品。同作を読んでいれば、その設定もだいたい予想がつく。あとはどうひねるか。そんなネタが割れていると、どっちが本物? 的なドタバタがかったるいが、オチはまあまあ……の割に、もう覚えてなかったり(^^;)

『不寛容な羊』☆☆☆☆
監禁事件がテーマ。ネタの転がし方は連城三紀彦っぽいが、ブラックなオチは皮肉屋の私には面白かった。心理学をベースにしているところも『病んだ羊』との関連を出している。なお、本書はひとつめの短編以外は書き下ろし、というあまりないスタイルだ。

『因果な羊』☆☆☆★
これまでの事件から数年後、これまだの書き下ろし作品の登場人物が因縁を語ることで事件の一端が明らかになる、創元推理らしい連作短編スタイルで落とす。