思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『贖罪』
☆☆☆★

小学校で起きた少女殺人事件に関わる被害者の四人の友人のエピソードを順に描く。1つの事件を複数の視点から描くことで、違う側面が明らかになる、という意味では、貫井徳郎の『プリズム』『微笑む人』、そして連城三紀彦『白光』などに近い。
それらとも似て非なるところは、中編のエピソードが進んでも、事件の全体像が明らかになるどころか、関係者それぞれに新たな事件が起きること。むしろ、過去の1つの事件をきっかけに、それぞれの関係者が辿る哀しい運命を描いたもの、と言える。
そして最後の中編では、ある意味真犯人かと思われた人物にも、悲劇的な拝啓があることが分かる。
と、ぶっちゃけて言えば、ヨーロッパ映画的なこの世の不条理を描いた文学(的なミステリー)と言えなくもない。
純粋ミステリー的に言えば、中編が変わるごとに、サイコロが進むように、新たな面を見せつつ、景色が変わる様を楽しむ作品というか。
ある種のブラックさは、山風の初期短編ミステリにも似たテイストと言えるかも。