思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『火の鳥(5)』


☆☆☆★

復活編 羽衣編

復活編は、未来編の前日譚。ネタバレ的に書いてしまうと、ロビタに秘められた謎が明らかになる。これだけでも、実にSFミステリ的な構成。本作の白眉は導入で、死んだ主人公が、サイボーグ的に脳の一部を含めて身体の6割を機械化した結果、ロボットが人間に、動物が無機物に見えるようになった。これは『妻を帽子と間違えた男』(未読だけど、内容はなんとなく知ってる)のような、恐らくは当時の最新の医学/科学的治験であろう。それの表現が、覚醒した当初は、縞模様だけで自身を表し、他者はブロックか岩を積んだように描かれるのだ。読者の評判が悪かったのか、次第に新しい器官にも慣れてきたのな、中盤以降は普通の人間にトーンを貼っただけの表現になっているのが惜しい。本編も、自分を殺したのは誰なのか、というまさしくミステリー的な展開を見せる。

羽衣編
手抜きと言えばとんでもない手抜き。芸術的といえば芸術的。舞台中継をマンガでやってしまったのだ。数十ページものあいだ、カメラ(構図)は全く変わらず。つまりは背景はコピーの使い回しなのだ。1ページに4コマ、というコマ割りが延々と続く。キャラも当然アップはない。スポットライトなんかは表現されていたり。内容は、いわゆる昔話の天女の羽衣伝説のそれ。