思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ここから先は何もない』
☆☆☆☆

ミステリもSFも書く山田正紀だけに、タイトルからして本作も究極のメタ・ミステリかと思いきや、ミステリ下手のSFだった。
あとがきでは『星を継ぐもの』の不満を解消すべく書かれたとのこと。本作はそれに『神狩り』『火神を盗め』『沈黙のフライバイ』などのフレーバーを混ぜた力作である。
ミステリSFとしての最大の謎は(うるさく言えばネタバレだが、中盤に入るあたりで明かされるのでいいかな?)「小惑星探査機がブラックアウトの後、目標を変更した上、自分で送受信機を再起動した」とのこと。
それに加え、初期の山田正紀作品の醍醐味であるミッション・インポッシブル的な冒険小説として、沖縄の米軍基地のサーバーに電子的にも物理的にも潜入する、というものがある。こちらは、地に足のついたハードボイルド。挑むのは、一応各分野の専門家ではあるが、超一流というほどでもないメンバーたち。
殆どすべての謎(伏線も含む)に解決が与えられるのはミステリ作家・山田正紀の面目躍如たるものがある。また、SFとしては、尻切れトンボが多い中にあって、本作は書ききった感がある、という点でも満腹度が高い。

但し、ミステリとしては、重大なアンフェアがある。「完全なスタンドアローン」という前提に嘘があるのだ。後だしジャンケンとも、知らかった情報タイプのミステリーは、本格ファンには最も忌避されるところでは?