思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

死んでもいい

櫛木理宇
☆☆☆★
早川文庫J A

『死んでもいい』☆☆☆★
暴力を伴う学生のいじめが読む気力を失わせる。そのへんは斜め読みしてでも読み進めると、意外な真相がオチとなる。ただし、その理由についてははっきり書かれていないので、ミステリーとしてはともかく、純文学あるいはそれ以前の、小説としては、その心情こそ描き込んでほしかったところ。

『ママがこわい』☆☆☆★
幼稚園の、先生に対してだけでなく、ママ友に対してもモンスターな母親の描写を我慢して読んで行くと、これまたまさにミステリー的なオチが待っている。吉村達也あたりが書きそうかも。

『からたねおがたま』☆☆☆
タイトルは、神社の森の奥にある、ある種の呪いの木。そこで少年時代にあった少年と年上の義理姉との出来事と、成長してからの再会。要するに血縁ドロドロもの?

『その一言を』☆☆☆☆
妻が妊娠中の、平凡な夫にストーカーが。そしてその妻が殺されるが、被疑者が取調官に語ることと、被害者夫婦の視点との関係に、ミステリーとしとだけでなく、小説としてのカタルシスもある、本書中の白眉。

『彼女は死んだ』☆☆★
上京して、数年ぶりに帰京した主人公が、学生時代の文芸部で顧問の先生から借りた小説のコピーを読み返す。それは部内の人間をモデルにした小説だった。ある意味、ありがちな設定だが、真相を明かせない理由に作者らしさがある。

『タイトル未定』☆☆★
本書の内容を踏まえて、作者自身にストーカーの魔手が伸びてくる。折原一的な展開だが、オチはない??