思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ハクソー・リッジ
☆☆☆★
序盤は、なんかいかにもいじめられっ子みたいなヤツだなぁ…。と思って見ていたが、最後にはしっかり感動(感心)させられた。
ただ、前半と後半にきになることが2つほどあった。
前半では、主人公が敬虔なクリスチャン、つまり徹底して武器を取ることを拒否する動機がほとんど描かれていないのだ。もうちょっと悩んで、牧師や聖書と向き合った末の結論としての「殺すなかれ」の徹底、言うまでもなく他の戒律にも厳正である、と言う描写がないと、単なるわがままな奴にしか見えないのだ。つまりは主人公に感情移入できない。
その結果としての軍法会議でも、わざわざ憲法の条文を主人公の父親が私に来る、と言うゴタゴタも、為にする演出にしか思えなかった。そんなの弁護側が指摘するのが当然やん。それとも単なる父親のコネだったんだと言う事実では、盛り上がらないからの演出?(事実は知らんけど)
後半は、メルギブ版『プライベート・ライアン』と言うか、それ以上のゴア(現実的)描写で、まさしく戦場のリアリティを感じさせてくれる。『ガンダム めぐりあい宇宙』の「生か死か、それは誰にもわからなかった」を表現したような、敵も味方も見境なく、容赦無く、あっさりと死んでいく冷酷な描写が素晴らしい。
日本側も、アメリカ側からすれば敵なので、悪役として絵がれているが、一応許容できる範囲かな…と思っていたら、最後にどうしても許せないシーンが。白旗を揚げて出てきたのに、手榴弾を投げようとするのだ。まずは白旗を出すこと自体が戦争末期にあってはあり得ないのに、さらには騙し討ちみたいな戦法は絶対に取らないだろう。こう言う嘘を入れないとアメリカの正当性を担保できなかったのか。
事実上のラストシーンで、主人公をまるで昇天するキリストのように描写したのも、メルギブらしい胡散臭さ(^_^;)
とりあえず、平和主義の主人公はほとんどナウシカかナディアで、これこそ日本が作るべき戦争映画なんだけどなぁ…。