思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『二重生活』☆☆☆☆

日本映画チャンネルの「月イチ衝撃作」にはハズレがないなぁ・・・。
一体どんな映画なのかわからずも、観てみた。
主人公・門脇麦は、哲学の卒業論文で、最初は100人にアンケートを取るつもりだったが、リリー・フランキー指導教官に提出したら、たった一人誰でもいいから尾行するのはどうか? と言うメチャクチャな提案をされる。その相手は、たまたまアパートの前の家に住んでいた、一人娘を愛する、幸せを絵に描いたように見える父親(長谷川博己)だった。
ところが、長谷川は仕事関係のデザイナーと不倫をしているところを発見し・・・。と言う話。
主人公は『愛がなんだ』みたいな感じでゲーム会社の若手キャラデザイナーと同棲していて、その関係もなんとなく続いている感じ。ところが、観察対象の不倫から、長谷川の奥さんが自殺未遂するなど、関係者が壊れてゆき、フランキーも実の母親が末期癌で亡くなるなど、結局誰も得をしない。
単なる最近の日本映画にありがちな世の中の無情(とセックス)を描いた映画かと思いきや、ラストに至って、それぞれに隠していた過去や秘密が明らかになる、ミステリー的などんでん返しがある。
そもそも、サイコ野郎な発想にしか思えない、卒論のテーマに、無関係な他人を尾行して、それを卒論として公表する、と言うリアリティが全く感じられなかった設定にも、一応の理由づけがなされる。と言うか、理由をまんまモノローグの台詞として語らせてしまう。セリフにしなくても、と言うツッコミと、いくらなんでも大学の教師が卒論にして学生にさせるのは犯罪だろ? と言うツッコミとが出るのは禁じ得ない。どこかに隠棲した狂った博士が研究と称してやっているのを目撃するなり巻き込まれたりするサイコホラー映画ならわかるが。
見終わってみると、他の「月イチ衝撃作」と同じテーマ性(世間の片隅あるいは裏側、セックス、暴力、満たされない生活など)を感じるのはどうもなぁ・・・。衝撃というからには、破天荒な娯楽作(『GOEMON』とか(^_^;))でもいいと思うのだが。

以下ネタバレ

ラストにフランキーが末期の母親に結婚相手を対面させるのが、バイトだった、というのをわざわざ主人公に教える意味がわからん。それ自体はミステリーではよくあるので、別に驚くことではないし、バイトの女が、役作りだと称して弁当を作るのもわからん。ラストに、実はフランキーの方も主人公を尾行していた、というのもそこまで以外でもないし。結局、フランキーがサイコ野郎だった、という、本作はやっぱり青春の迷いを描いた映画と見せかけた、黒沢清風のサイコホラーであった。