思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『あぶない叔父さん』摩耶雄嵩
☆☆☆★

北陸の田舎の高校生である主人公が巻き込まれる事件を描く連作短編集。
一見地味だが、作者らしい意地悪さが随所に垣間見える。どこがどうと(ネタバレなしでは)はいいづらいのだが……。
多少気になったのは、高校生らしくない言葉づかいくらいか。
タイトルにもなっている叔父さんは、モロに金田一耕助ピース又吉だ。

以下、ネタバレ。

第2短編を読むと、「もしかして作者なりの『妖異金瓶梅』なのか?」と疑った。六作品の中にはひとつ違うパターンもあるが、基本的には同じ。
本作における叔父さんは、何でも屋なんて他のミステリーでは探偵に近い仕事をしているが、名探偵ならぬ名目撃者。さらに言えば名巻き込まれ者。さらに作者らしい邪悪さで言えば、不慮の加害者、つまりは過失致死ばかりしている連続殺人犯人とも言える。
そんな叔父さんの人柄をを慕う主人公、という関係は、モロに『妖異金瓶梅』だったのだ。
逆に言えば、それを知らないと、妙にもやもやする作品かもしれない。そもそも主人公の三角関係も結論を出さないままだし。