思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『アルテミス(下)』
☆☆☆★

下巻はモロに山田正紀の初期冒険小説を思わせる、素人による不可能ミッションもの。
上巻で未達成に終わった、アルミニウム工場の破壊テロの完遂に再度挑む。
……と書くと、犯罪小説みたいだが、主人公の性格があっけらかんとしていることと、協力者が真の善人なので、ブラックさは感じない。
ターボで読みたいのだが、逐一展開のディテールがテクニカルなので、読み飛ばせないのが嬉しいような、面倒なような……(^_^;)
とは言え、月面都市がどういうものかという説明台詞ばかりとはいえ、物語が進展しながらなので、そこまで説明臭くない。本書を読み通せば、ハードSFとしての月面都市の全体像を把握できる。説明がないのはトイレくらい?

以下、ネタバレ。

後半に、不慮の事故で大ピンチになる。
月面都市の全員が毒ガス(クロロホルム)で全滅するかも、という危機だ。とうぜん、なんとかしてその危機を乗り越えるのが、裏表紙に『ハリウッド映画的に』と書かれる通りというか、エンタメ小説の常識としても、また作者の性格からしても、最後には「全員」助かる。さすがに都合よすぎでしょ?スーパー戦隊じゃないんだから( ´Д`)
ここで主人公たち三人以外全員死亡して、「取り返しのつかないことをしてしまった……」というラストにすれば、SF史に語り継がれる名作(怪作?)になったのになぁ……( ´Д`)

アルテミス 下 (ハヤカワ文庫SF)アルテミス 下 (ハヤカワ文庫SF)
アンディ ウィアー 小野田 和子

早川書房 2018-01-25


天竺熱風録 4 (ヤングアニマルコミックス)天竺熱風録 4 (ヤングアニマルコミックス)
伊藤勢 田中芳樹

白泉社 2018-08-29