思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『スケールアヴィエーション』
☆☆☆☆

ガダルカナル航空戦特集。要するに日本の水上機特集だ。考えたら、航空戦なのに、敵機がひとつも出てこないのに今気づいた。
まずは零戦の色である濃緑色の表紙デザインが素晴らしい。
その表紙に使われている田宮32ベースの零戦水上機タイプの筆塗りによるハゲチョロが圧巻。
変化球として、水上機母艦という艦船模型もあり。小学生が考えたような巡洋艦と補給艦とカタパルトがキメラ的に合体したもの。
凄いのが、水没した零戦の海中ディオラマ。その透明感、熱帯魚が泳ぐ、超絶技巧の作品だ。
久々のローガン大名モデリングもあり。フィギュアの顔を墨入れで済ませる方法が参考になる。
松本州平の大型水上機も格好良い。ハゲチョロがただの点々なのが致命的に残念だが…。


補足版
紙魚の家』マーク・Z・ダニエレブスニキー著/嶋田洋一
ソニーマガジンズ
☆★

実験小説。『湮滅』とか『ゴーレム100』のような、タイポグラフィーを自由奔放に駆使した作品が好きな人にはオススメ。本も大きければ厚みもある。
註釈しかないページはあるわ、読点「。」しかないページまである。
巻末のほうには、引用したかったが、しなかったメモみたいなものもある。イラストもある。果ては、註釈に消去線が引かれているものまでそこそこあるのだ。

複合的なスタイルでテーマを語る手法は傑作アメコミ『ウォッチメン』を連想させなくもない。
基本的なストーリーは、ある人物が残した映画を追う、ルポタージュまたは取材メモ、あるいはノンフィクションのような体裁。
ただし、下手すると本文より文字数が多い(文字級数が小さいので)註釈とか、全部すっ飛ばしてターボ読みしたので、細部や、註釈によるドンデン返しなどの多層構造は(あったとしても)分からない。
殺人でもSFでも哲学でもないので、メインストーリーに乗れなかったのが原因だが。もちろん分厚すぎるのと。
これらの手法は、大文字の作者の存在を読者に強く訴えるもので、読み込めば、多角的な解釈ができそう。
まっとうなミステリーなら、これらを時系列的にきっちり本文に並べ込んで仕上げるのだが…。例えば『江戸川乱歩の大推理』のようなメタミステリーとして。

紙葉の家紙葉の家
マーク・Z. ダニエレブスキー Mark Z. Danielewski

ソニーマガジンズ 2002-12


佐久間象山童門冬二
☆☆☆★

歴史小説ではないが、会話分どもない強調語を「」に入れ、前後を改行するため、パラパラめくると歴史小説に見える。
あくまでも現代から、歴史を捉えたルポタージュ風の一冊。やや、例示にサラリーマン的な視点が多いのが特徴。
また、詳しい出自がないが、記述に重複が多いのも減点要素。
肝腎の佐久間象山の生涯については、『風雲児たち』でほぼ十分に描かれているもの。覚えていない(マンガに描かれていのあ2)のは朝臣になって、暗殺される前あたりくらい。しかしそれもラスト20ページもないくらい(^_^;)

幕末の明星 佐久間象山 (講談社文庫)幕末の明星 佐久間象山 (講談社文庫)
童門 冬二

講談社 2008-08-12