思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

東京島

十五少年漂流記』ならぬ、三十人の大人が無人島に漂流したが、女はただ一人。正確には、夫婦の後に、次々と男ばかり漂着してくるのだ(^_^;)
サバイバルものは、『ロビンソン・クルーソー』をはじめ、SFとしても王道テーマのひとつ。
女性の視点がメインだが、さまざまな視点で描かれる。
極限状態の人間模様、といえば聞こえはいいが、要するに「いんな人間がいるなぁ…」というだけ。それにしては、バリエーションに乏しい。
どうしても、『そして誰もいなくなった』か、折原一的などんでん返しを期待してしまうが、そんなものもなく……。
かといって、壮絶なカタストロフがあるわけでもない。唯一挙げるなら、主人公の妊娠と出産くらいか。ドラマとしての面白さではなく、プロットとしての意外性や豊富なアイデアを期待する向きには不向き。ちなみに30分5速読で読んだ。

東京島 (新潮文庫)東京島 (新潮文庫)
桐野 夏生

新潮社 2010-04-24


神戸電鉄殺人事件』
☆☆

本格ミステリーとしてみれば、小学生が書いたような内容。最初の女優が失踪・死亡した後のマンションに、5人が順番にやってきて、しかもマネージャーは外で待っている、という展開はギャグ?というくらいヒドイ。カンボジア関係の因縁が浮上した後も、二階堂黎人とかなら、ここから本書の3倍くらい続くプロットが待っているのに、本作では囮捜査にあっさり協力し、10ページくらいで終わってしまう。

神戸電鉄ユーザーとしてみれば、鉄道ミステリーとしても落第点。
小説としてみれば、カンボジアの仏像を帝国陸軍のいち部隊が盗み出したというのも、右翼左翼を抜きにすれば、ギリギリ成立している、というレベル。

神戸電鉄としてのトリックの問題点は……(以下、リンク下でネタバレ)

神戸電鉄殺人事件神戸電鉄殺人事件
西村 京太郎

新潮社 2016-01-22

最大のトリックは、十津川警部が、有馬温泉から神戸市街(本作では「神戸市内」と表記しているが、有馬温泉はれっきとした神戸市内であり、事実誤認と言える)へ移動するのに、車を使っていること。また、神鉄神戸電鉄がタイトルになっているのに、神戸っ子がそう呼んでいることに一言も触れていないなど、取材不足が明白)で新神戸から有馬温泉に行ったのに、有馬口で乗り換えたことに気づかないのも、かなり怪しい。まあ、この2つは「省略」というミステリ的には許されるテクニックではあるのだが……。
トリック的に問題なのは、「終点までの切符を買ったら、普通は乗った途端に寝てしまうもの」という殺人犯人の心情(前提)だ。「そんなやつおらんやろ〜〜(海原こだま・ひびき調に)」と言ってしまえば終わってしまうことだが、一応説明すれば、新開地が目的地であっても、電車の行先が「有馬口」とあれば、気になって確認するやろ?そもそも有馬温泉発の電車は100%が有馬口行きなのだ。乗った電車が三田に行くか、新開地に行くかは、慣れない人なら絶対に確認せざるをえない環境なのである。