思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『魔偶の如き齎すもの』三津田信三
☆☆☆☆
講談社

『妖服の如き切るもの』☆☆☆★
元々大きな屋敷だったものを、中庭を売り払ったために2軒を隔てて2つの屋敷が離れた、という位置関係の設定が面白いのだが、要は連続殺人事件のアリバイトリックもの。よく似た設定かつ、ホラー要素のある短編を読んだのだが、短編は思い出すのが難しい(^_^;)トリック自体もまあ、難易度は低めだろう。限りなく☆☆☆に近い。

『巫死(ふし)の如き甦るもの』☆☆☆☆
とある変人が作った小さな村。そこに集まる奇妙な人たち。作中でも触れられている通り、新興宗教ものとして、長編で十分持つだけの設定である。「行」としての「見ない」「喋らない」など6人の男女が登場するなど、ホラーとしても実に魅力的な理由が付けられそうなのに、ほとんどスルーされる。実に勿体ない。人間消失トリックが作品のテーマとしても見事にリンクしているし、これはぜひ長編化して欲しいなぁ・・・。

『獣家の如き吸うもの』☆☆★
まず、これまた関係ない2つの怪談短編から始まるので読みづらいし、トリックそのものも、シンプルな物理トリックかつ、ホラー的な驚きともリンクしていないし、ちょっと外れかな・・・。いつの間にか階段のない2階に移動している、というのがミステリ的な謎なのだが。


『魔偶の如き齎(もたら)すもの』☆☆☆☆
これのみ書き下ろしで、中編のボリュームがある。「卍館の殺人」ともいうべきものだ。ただ、正確には「卍展示廊下の傷害事件」なのだが(^_^;) 刀城と祖父江偲との出会いでもあり、「祖父江偲最初の事件」とも言える。トリックそのものは十分想定の範囲内だが、そこに到るまでのツイスト(ほぼ全ての登場人物が順番に犯人だとされる)と、フェアプレイの伏線の開陳を楽しむものでもある。